「幽☆遊☆白書」や「AKIRA」など多くの作品で活躍する声優の佐々木望さん。2013年、40代後半にして一般入試を経て東京大学に入学し、50代前半で卒業を果たしている。
大学進学のきっかけは、30代半ばに声帯を痛めたこと。私は高校卒業後、基礎的な訓練を受けないまま声優デビューしたので、自己流だった発声法を改めるために本を読み漁りました。中には英語で書かれた専門的な文献も。英語はもともと好きでしたが、声の状態が安定し心に余裕が生まれると、今度は英語そのものを体系的に学びたくなり、英検1級や通訳案内士の資格を取得。さらに「アカデミックな英語を勉強したい」と考えるようになりました。
また、10年にボストンに短期の語学留学をしたことも契機に。同世代のホストマザーが、数年前に仕事を辞めて大学に通い、新たに学んだ分野の仕事に就いたと聞いて触発されました。
受験のために何科目も勉強するのだから英語だけに絞らず、総合大学で未知の領域に触れたほうが面白い。仕事優先での両立を考え、国公立で都心に近い総合大学――と考えたときに浮かんだ選択肢が東大でした。
声優の仕事は不規則なので予備校通いはせず、基本は独学。英語が得意なのはアドバンテージになりましたが、社会や理科はゼロからの勉強です。例えば地理ではサハラ砂漠の位置すら分かっていなかった(笑)。知らないことを知ること自体が楽しかった。受験は誰かに強制されているわけではないので、大学に入る前の勉強も楽しんで、気楽に臨もう。そう思えたから、2年弱におよぶ受験勉強を続けられたのだと思います。
文科一類に合格し、入学後は仕事との両立の日々が始まりました。朝、一限の授業に出てから仕事に行き、夕方、キャンパスに戻って授業を受ける日も。試験を受けてすぐに収録スタジオに行ったり、イベント出演が終わった深夜にレポートを書いたりしていました。
1年次に受けた基礎演習の授業では、言葉の論理を学ぶのが面白かった。新聞記事や論説文などを題材に、論理の瑕疵や矛盾点を突いてレポートを作成するもので、文章を書く際や話す際に論理構成を意識するきっかけになりました。また、選択科目のスペイン語作文を履修したら、なんと学生は私だけ。ネイティブの先生にマンツーマンで学ぶのはハードでしたが、ぜいたくな経験でした。
《この続きでは、大学卒業までの経験談と「法学が声優の仕事に役立つの?」という問いへの答えについても詳しく触れている。現在配信中の「週刊文春 電子版」および4月30日(木)発売の「週刊文春」では、本記事の全文と「麻木久仁子さんの放送大学での学び直し」記事も読むことできる。また、「週刊文春」では50歳からの「大人のための手習い入門」として語学学習やガーデニングなどについても取り上げている》

