――真中さん、いよいよ9月です。10日現在、セ・リーグ2位。クライマックスシリーズ(CS)圏内どころか、ファーストステージの神宮開催も現実に迫っていますよ!

真中 うん、そうだね。いい感じで、ここまで来ているよね。

――まずは8月の戦いを振り返っていただけますか? 8月は25試合戦って、14勝11敗という成績でした。

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真中 厳しい試合も多かったけど、全体的にはよくやっているなという印象だよね。前半戦は、中尾(輝)、近藤(一樹)、石山(泰稚)がしっかりと踏ん張って、先発投手に勝ちをつけていたけど、後半戦にピッチャーが疲れてきて苦しくなってきたところで、打線が見事につながって、しぶとく点を取っていく。理想的な形ができているよね。

「二番・青木宣親」が好調打線のポイント

――「打線のつながり」で言えば、「二番・青木宣親」が、効果的にハマっていますね。

真中 そうだね。確かに「二番・青木」の存在感は目立っているよね。でも、やっぱり、今年のヤクルト打線は「バランスの良さ」がポイントだと思うんですよね。「一番・坂口智隆」はコンスタントに出塁しているし、「三番・山田哲人」「四番・バレンティン」も、結果を残しているからね。そういう意味では、青木が上位打線を見事につなぐ役割を果たしていると言えるのかな? でも、周りがしっかり機能しているからこそ、青木の存在も光るわけであって、やっぱり、今年のヤクルト打線は「バランスの良さ」が見事だよね。

二番打者としてヤクルト打線を支えている青木宣親 ©文藝春秋

――打線は厚みのある陣容ですけど、開幕前から懸念されていた投手陣不足は、解消されたわけではないですよね。この点はどう見ていますか?

真中 とりあえず、ブキャナンにしても、石川雅規にしても、いいときもあれば悪いときもあるけど、きちんとローテーションを守ってくれているというのは大きいよね。カラシティーも、開幕後の先発転向だったけど、きちんと投げてくれているからね。

――手薄な台所事情でありながらも、何とかやりくりを続けて、ここまでの位置をキープしているという感じですね。

真中 先発ローテの谷間で、古野(正人)と、山中(浩史)が勝利投手になった試合があったよね。

――8月29日は古野投手が支配下登録復帰後の初勝利。翌30日は二軍から昇格した山中投手が8回途中1失点で今季初勝利。「6連戦で先発が2人も足りない」という非常事態を見事に乗り切りました。

真中 古野も、山中もよく頑張ったし、9月5日には高橋奎二がプロ初先発で手応えをつかんだし、手薄でありながらも、来季につながる人材も出てきているし、楽しみだよね。それにしても、小川監督は大変だったと思うよ。でも、先発投手が早く崩れたとしても、大下(佑馬)や、風張(蓮)、星(知弥)たちが、ロングリリーフで頑張ったのも大きいよね。

ストレートを磨き、縦スラの効果的な使い方で原樹理は覚醒した

――夏場の救世主として、原樹理投手の覚醒も大きかったですよね。

真中 開幕時は先発ローテを任され、結果が出なくて中継ぎになって、そしてもう一度先発に戻ってからの原は別人みたいになったよね。ストレートの力が戻ったきたのが大きいのかな。元々、シュートピッチャーとしてすばらしい才能を持っていたけど、それを生かすためにはストレートが大事だから。ストレートの勢いが戻ってきたことで、シュートはもちろん、カットボール、スライダーも生きてきて、バランスのいいピッチャーになった。そんな印象だよね。

――真中監督時代にも、大きな期待を寄せられていた原投手。今年は何が変わったのでしょうか?

真中 彼自身、立ち上がりがよくなかったり、ピンチの場面ではすべてを背負い込んでしまったり、課題はあったんだけど、去年の後半くらいからは「来年はやれるだろう」という手応えは持っていたけどね。今年の前半戦で結果は出なかったけど、僕としては「キャンプの調整がうまくいかなかったのかな?」と、考えていた程度で、大きな心配はしていなかったです。あと、今年変わったかなと思うのが、スライダーの使い方ですね。

――スライダーの使い方が、どのように変わったのですか?

真中 彼の場合、落ちるボールはあまり得意じゃないんだけど、今年は縦のスライダーをフォークの代わりに上手に使っているよね。縦スラで、上手に空振りを取っているシーンが目立っていますね。球場で見ていると「あっ、フォークかな?」って思うんだけど、映像で確認するとスライダーを縦に落としていて、そんな工夫も去年と変わったところかな。

再度先発に戻ってから、別人のような活躍を見せている原樹理 ©文藝春秋