1971年(昭和46年)春、群馬県一帯で127人もの若い女性にナンパし、車に乗った30数人のうち16歳〜21歳の女性8人を殺害した男がいる。

 当時36歳の無職、大久保清。ベレー帽をかぶり最新のスポーツカーを乗り回し、自称画家を装った「男の正体」とは何だったのか。

母は息子の強姦をとがめず「女に騙されたんだ」と励ました

 大久保の凶行を語るうえで、母親の存在は欠かせない。1935年生まれの大久保は、8人兄弟の三男として育ち、母親から「ボクちゃん」と呼ばれ溺愛された。その呼称は逮捕時まで続いたという。

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 小学6年生のときに幼女を麦畑に連れ込み、下半身に石を詰めるなど性的な暴行を加えたが、母親は「子供のお医者さんごっこよ。目くじらたてるな」と息子をかばった。

写真はイメージ ©getty

 20歳で初の強姦事件を起こしたときも、母は「女は魔物と言うからの。女に経験のない若いボクちゃんが騙されるんも、無理はないて」と励ましたという。刑務所への収監を繰り返しながらも、歯止めのかからなかった欲望の根には、こうした成育環境があった。

 1971年3月に仮釈放された大久保は、両親から資金を出してもらい新車を購入。助手席に絵筆や専門書を置いて画家や教師を装い、連日平均170キロメートルを走り回って若い女性に声をかけ続けた。犠牲者の多くは見知らぬ相手に突然襲われたのではなく、それまで複数回会っていた。インテリ風の語り口と話題の豊富さが、女性たちの警戒心を解いたのだ。

 殺害の直接の引き金となったのは、被害者が「身内に警察官・検察官がいる」と口にした瞬間だった。大久保の供述によれば、8人のうち5人がそうした発言をしており、他の2人は大久保が刑務所帰りであることを事前に知っていた。自らの正体が露見することへの恐怖が、命を奪う決断へと駆り立てた。

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