どうして、どんな時でも立ち止まるのか
「どうして、梅野は立ち止まるのか」。ヤクルト戦の翌日、単刀直入に聞くと、静かにうなずき言葉を吐き出した。
「特に昨日みたいな時は、嫌なこともありますよ。今までも、今日は、何も喋りたくないと思ったこともあります。でも、もう終わったことなんで。結果は変わらない。数多く試合に出してもらっている以上、良い時も悪い時もあるし、自分の言葉で責任を負いたい。犯人捜しをしてるわけじゃないし、自分は無言で帰ったりはしたくない」
負けた後に何をペラペラ……と苦言を呈する人がいることも想像できる。賛否ある中、1つだけ言えるのは、梅野は口にする言葉に強い責任を持って、どんな時も問いかけに答えているということだ。
プロ5年目の今季、キャリア初の大台に到達しようとしている。11日の中日戦を終えてスタメンマスクはシーズン117試合中、96試合を数える。100試合以上となれば、タイガースでは、城島健司が全144試合に出場した10年までさかのぼらなければならない。同世代の原口文仁、後輩の坂本誠志郎らライバルがいる中で、今季は誰より多くマスクを被り、チームの勝敗を背負ってきた。
「100試合っていうのは、今まで無かったし、1つの目標でしたけど、チームも借金がありますし、捕手として、満足はできない。数字として100になったというだけですね」。節目にも一切、笑顔はない。開幕から振り返っても「うまくいった試合なんて、ほとんどないです。毎試合、こうすれば良かったという反省がある」と大きく首を振った。
今、左右の太ももには、こぶし程の大きな「あざ」がある。「甲子園は土が掘れやすくて、ワンバウンドが不規則に変化したり、難しい。でも、自分は全部止めるつもりでやっているので」。鈍痛ににじむのは、捕手としてのプライドに他ならない。正捕手への険しい道のりを、今日も梅野は力強く歩んでいく。
遠藤礼(スポーツニッポン)
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