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地震とラジオとファイターズ…「日常」を整えることの大切さ

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/09/14
note

14日の夕方には私たちの「日常」が戻ってくる

 いまこんな時に野球をやっていていいのか。離れた鎌ヶ谷の選手も感じているのです。今回の地震は1軍の選手は札幌にいて道民と一緒に体感しました。あの揺れと停電と断水を経験すれば、もっともっと思いを募らせたことでしょう。いまこんな時に野球をやっていていいのか、と。

 この震災の前の私なら……違うことを言ったかもしれない。でも今ははっきりと言う。環境が許すのであれば、思い切り野球をやってください。それを責めるファンなんているわけない。野球で「日常」を伝えられるのはあなたたちにしか出来ないことです。これは実際に被災して、さらにマイクの前に座ったからわかったことです。「非日常」に囲まれているときはそればかりになってしまう。だけどわずかな瞬間にどこからか差し込む「日常」がとてつもない安心感をもたらすのです。ああ、そこに戻っていけばいいんだ、と気持ちを落ち着かせることができるのです。そして、いずれ戻っていく「日常」は以前と変わっていてはなりません。戻ってくる立場に対し、気を使ったよそよそしいものであっても決していけません。それは「日常」ではないのです。災害時には被災者に寄り添うことと同じくらい、それをできる立場の人間は「日常を粛々と整えておくこと」が大切だと今回痛感しました。

「日常」。

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 リスナーさんにとってそれはラジオであり、ファイターズだった。私にとってのそれは、日々のファイターズをリスナーさんに伝える自分だった。

北海道地震後、最初の試合となった8日の楽天戦

 この原稿を書いているのは12日の夜、HBCです。厚真町を中心に余震はまだ続いていて、いままたすぐそばで小川アナウンサーが地震速報を伝えました。道内には停電が続くところも避難所で生活する人もまだ多くいます。札幌も節電中、マンションの入口も職場もこのラジオのスタジオも薄暗い毎日です。お店もまだ品数が少なく、早仕舞いのところも多くあります。「非日常」が続いています。だけど、この記事がアップされる14日の夕方には私たちの「日常」が戻ってきます。震災後初の試合が札幌ドームで18時プレーボールです。普段の生活すべてが「日常」という文字にぴったり重なるにはまだ少し時間がかかりそうなので、私たちは試合が行われている何時間かだけでも「日常」に身を委ねるのです。

 さ、あとすこし。始まる。

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