「ダブったら寮を追い出されてしまう」東京学芸大学を首席で卒業した理由
――燃え尽きたと言いつつも、学芸大を専攻首席で卒業されたこともすごいですよね。
由女 普通にやってたら首席だったんですけど(笑)。
主には成績を落としちゃいけない理由があって、月4500円のまじボロボロの国公立大学の女子寮に住みながら、学費免除とかの申請を出してたんですよね。
私は和歌山の中流家庭出身なんですけど、世帯年収600万円で4人扶養家族がいたんで、親が仕送りで苦労していることもわかるし、これ以上迷惑をかけたくない気持ちもありました。そもそも東京に行くこと自体、賛成されてなかったんで。
――金銭的な問題で東京の大学に行くことに賛成されなかった?
由女 そうですね。「国公立大で、安い寮で生活するから東京に行かせてくれ」っていう交渉をして。自分の娘が国公立大に行って、しかも公務員になるんだったら許してやるか、みたいな感じですかね。ほんとに渋ってましたけど。
成績優秀者だと学費が全額免除してもらえる上に、国から援助がもらえるんですね。それで国から月2万7000円もらっていたこともあり、ダブったら寮を追い出されてしまう事情もあって、成績をキープする必要があったんです。
「親は私のことを、次元を超えた存在として見てる」
――東京大学大学院に入ってみて、レベルが違うと感じたことはありますか。
由女 ありましたね。理系の大学院だったので、私自身が理系のバックグラウンドがないこともあり、学芸大の3、4年ぐらいから大学数学を独学で勉強しだしたんですけど、それを使って何かしたことはなくて。
だけど東大の皆さんは、線形代数学とか微積とかを活用した実験だったり、ものづくりみたいな経験がある人たちなんで、次元が違いました。
で、彼らはどんなに無理難題な宿題でも絶対にやってのけてくるんですよ。
――そうなんですか。
由女 インタラクティブアートといって、画面上の操作で何か反応を起こしてアートにするものを作ってこいという宿題があったんですけど、開発経験が乏しいはずなのにそれをクリアしてきて発表してる、みたいな。
そういう環境だったんで、しんどいなと思いながらやってて。でも、卒業しないと親の仕送りも大変だしということで、なんとかやってました。
――たとえばご家族に東大でやっている研究のことを話すと、「?」になったりしませんか。
由女 親は私のことを、次元を超えた存在として見てるんで。
――なりますよね、ちょっと。
由女 全国模試のランキングに名前が載るようになった中学受験の時からそうじゃないかなと思いますけどね。自分たちの手を離れた何かだと思われてる(笑)。
ずっとわけのわからないことをやってるけど、親としては子どもが東大に入ったらもうなんでもいいんじゃないですかね(笑)。
――やっぱり東大へ行った時は喜ばれましたか。
由女 おばあちゃんは入退院を繰り返していたんですけど、孫が東大に入ったと聞いたら病気が一時的に治って。それだけでも東大に入ってよかったなと思います(笑)。
撮影=志水隆/文藝春秋
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