将来プロ野球選手になりたい! でも今のチームでレギュラーにすらなれない、身長も大きくない……無理だ!
そんな野球少年や高校球児もいるはず。この話を聞いて希望を持ってください。夢を見てください。少なくとも私はアナウンサーとプロ野球選手という職業の違いはありますが、この選手から諦めないことの大切さを学びました。アナウンサーでなくても野球をやっていなくても、全ての人の折れそうな心を支えてくれると思います。仕事、恋愛、部活……何でもいいです。がむしゃらになってみませんか? 見てくれている人は必ずいます。
自分の持ち味を思い出させてくれた“ある出来事”
板山祐太郎選手は亜細亜大学からドラフト5位で阪神タイガースに入団。入団3シーズン目を迎えていますが、今シーズンの1軍出場は15試合にとどまり9月13日に2度目の登録抹消となりました。前日12日には代打で出場し、ドラゴンズの高卒ルーキー・山本拓実投手の前に3球三振。試合後、足を止めることなくクラブハウスへ引き上げていく板山選手の表情は、悔しさよりも自分への怒りが込み上げているようにも見えました。
しかし今シーズンはこれまで、なかなか1軍に上がることができなくても、後ろ向きな姿を見せませんでした。むしろ去年までとは違ってとっても前向きな言葉を発していました。それは“ある出来事”があったからです。
「お前を使いたいと思わない」
高知県の安芸で迎えた今シーズンの春季キャンプ。高山選手、坂本選手は沖縄宜野座でキャンプをスタートさせ、同期入団の野手では一人だけ2軍スタートとなりました。野手の人数がギリギリのなか練習試合を行っている状況で、板山選手は一度、試合に出ないことがありました。スターティングメンバーを外れ「正直ふてくされていた」そう。
「モヤモヤしながら2軍でのキャンプを送っているように見えた板山から感じるものがなかってん。外したらどんな態度を見せてくれるんやろう? と思ってな」。矢野ファーム監督は板山選手の何かしらの行動に期待して、あえてスタメンを外したといいます。
しかし、矢野ファーム監督の期待もむなしく板山選手はベンチでただただ座っているだけでした。「試合後矢野さんに『今日外れてどう思った?』と聞かれたんです。正直に、『悔しいというよりふてくされていたところがあった』と伝えました。すると、『その悔しさが今日の板山の行動からは全く伝わってこなかった』といわれて、自分でもそうだなぁと……」。上着を脱いでバットを振るわけでもなく、監督の前に座って大きな声をだすわけでもなく、お前を使いたいと思わないと告げられました。
矢野ファーム監督の言葉で、1年目は1軍でバントを失敗してもベンチで大きな声を出していたなぁ、泥臭さしぶとさが自分の持ち味なのではないか、大切なことを思い出したといいます。さらに板山選手は続けます。「矢野さんが今でも毎日ミーティングで“諦めるな”ということをおっしゃるんです。ただ、“諦めるな”ということではなく、家族や友人、自分を支えてくれている人が喜ぶ顔を想像して、その人たちを喜ばせようと頑張ってみろって」。