北朝鮮の朝鮮中央通信は5月8日、金正恩総書記が7日に新型駆逐艦「崔賢」に乗船し、機動能力総合評価試験を視察したと伝えた。正恩氏は試験の結果に満足し、6月中旬に崔賢を海軍に引き渡すよう指示した。同通信が配信した写真によれば、西側メディアが「キム・ジュエ氏」と呼ぶ正恩氏の娘も同行した。
同通信は崔賢の艦内食堂と見られる場所で、乗組員たちがカップ麺あるいはカップ飯とみられるインスタント食品を食べている写真を公開した。乗組員たちはスプーンを使っていたことから、カップ飯なのかもしれない。食堂には正恩氏とジュエ氏もいた。ジュエ氏の前に座った乗組員にもインスタント食品が配られていた。正恩氏とジュエ氏も食べていたのかどうかは、手元が隠れていたため、判然としなかった。
「海自ならあり得ない」VIP視察で出されたカップ麺
この写真をみた海上自衛隊元幹部は「海自ならあり得ない光景だ」と語る。海自艦にも政治家などのVIPが訪れることはある。その場合、艦内で調理した食事を提供する。元幹部は「VIPにインスタント食品を出すことは考えられない」と指摘する。
そもそも、海自はカップ麺やカップ飯を食料として採用していない。海自も「非常用糧食」として缶詰は採用している。戦闘態勢に入ると、調理員も配置に就くため、食事を作れない。その場合、缶詰に入ったごはんや副菜を配置場所に配る。乗組員は配置に就きながら食事を取ることになる。ただ、カップ麺やカップ飯はお湯を必要とするため、非常用糧食としては使えない。せいぜい、乗組員が個人的な夜食として三々五々艦内に持ち込む程度だという。
では、なぜ北朝鮮は最高指導者との席にインスタント食品を並べたのか。北朝鮮軍兵士だった脱北者は「おそらく、金正恩の差し入れだったのだろう」と話す。北朝鮮では経済が好調だった金日成主席の時代には、現地視察の際に側近がドルや人民元を詰め込んだケースを持参。視察先の要望に応じて札束をばらまいていた。ところが、1990年代にソ連・旧東欧圏の崩壊や「苦難の行軍」と呼ばれる大規模な食糧危機の発生などで、北朝鮮経済が苦境に陥った。金正日総書記は当時、札束の代わりに、日本から輸入した大量のカップ麺を段ボールに箱詰めし、視察先で配った。
