北朝鮮は5年ぶりの朝鮮労働党大会、7年ぶりの最高人民会議代議員(国会議員)選挙と同会議を終え、党・政府・軍・国会に至る新たな陣容を固めた。金正恩氏も党総書記と国家元首にあたる国務委員長に再選された。そんななか、西側メディアが「キム・ジュエ」と呼ぶ正恩氏の娘も、国際女性デーの記念公演の観覧(3月8日)、駆逐艦のミサイル発射試験のリモート視察(3月10日)、平壌セッピョル通りの植樹(3月14日)などで活発に活動した。
なかでも、植樹では、ジュエ氏はスコップを持ったり、父親の金正恩氏と一緒に土を運んだりする姿も公開された。
「どうやったら、市民に尊敬してもらえるのかを考えた」
金正恩氏が掲げる「人民大衆第一主義」を体現すると同時に、「市民のために働く姿」を見せる狙いがあったとみられる。
北朝鮮は20世紀のころから、日本の皇室や英国、タイなどの王室を研究してきた。北朝鮮の職場や家庭、地下鉄、バスの中にまで掲げられた金日成主席と金正日総書記の肖像画は、戦前の日本のご真影などをモデルにしたとされる。北朝鮮を逃れた元党幹部は「どうやったら、市民に尊敬してもらえるのかを考えた。権威を高める方法を研究した」と語る。それが、プライベートをなるべく明らかにしない「神秘主義」や、「射撃の名手」といった「超人伝説」につながった。
ところが、困った問題が起きた。かつての英王室の「ダイアナ妃ブーム」や、最近の皇室の「愛子様ブーム」のような、「国民に愛される王(皇)室」づくりについていけなくなったからだ。前出の元幹部は「権威を高めすぎて、国民の中に入っていけなくなってしまった」と語る。3月14日の植樹作業も、作業に熱中して下着姿になった李日煥党書記を横目に、ジュエ氏は革のコート姿のまま。土も運んだが、かかとの高い靴をそのまま履いていた。とても「ノブレスオブリージュ(高貴な身分の者の義務)」を果たしているようには見えない。泥にまみれて汗を流すどころか、まるでお姫様のようだ。

