「生活に心配のないお気楽な身分だ」と考える行動
犬を自宅で飼っている庶民もいるが、目的が異なる。3月27日付の党機関紙労働新聞は「平壌の大同江沿いにタンゴギ(犬肉)料理専門店が建てられ、竣工式が行われた」と伝えた。「北朝鮮の人々にとって犬は食べるもの。不足がちなたんぱく質を補う重要な栄養源だ」(元幹部)という。犬を自宅で飼う人は、トイレなどにつないで育て、大きくなると平壌の寺洞(サドン)区域など、主要な都市にある、ケチョン(犬村)と呼ばれる、犬肉だけを扱う店が集まった区画の市場に売りに行く。
こうした庶民が、ペットショップで子犬を見て笑うジュエ氏を見て、どう思うのか。
「生活に心配のないお気楽な身分だ」と考えるだろう。北朝鮮はすでに、抗日パルチザンは世を去り、朝鮮戦争(1950~1953年)を戦った兵士もわずかになった。金正恩氏が党大会などで新たに登用した世代は、もちろん苦労など経験したことがない。
それこそ、自宅で犬を飼い、子供にピアノを習わせているような連中ばかりだ。そういう側近がひねり出す、「庶民に親しみをもってもらうための演出」が滑ってしまうのは当然と言えるだろう。
朝鮮中央通信は4月3日、再び平壌・和盛地区のペットショップや楽器店を訪れた金正恩氏とキム・ジュエ氏の写真を多数配信した。市民の思いなど、全く耳に届いていないのだろう。
金正恩氏は2020年8月、自ら車を運転して水害の被災地を訪れたが、乗っていたのはトヨタ自動車の高級ブランド「レクサス」車だった。「庶民の生活を知らない側近たちがひねり出すアイディアに、庶民が喜ぶ案はありえない」(元幹部)。ジュエ氏が愛子様のように国民のアイドルになる日は訪れない。
