――「女と味噌汁」は現代のグルメドラマに通じる要素があるとか。
佐井 グルメドラマの元祖といえる傑作です。「孤独のグルメ」や「きのう何食べた?」、最近では「じゃあ、あんたが作ってみろよ」といった作品の根底にあるのは「食事のシーンが人間のパーソナリティや絆を象徴する」という手法。変化球ドラマだと「王様のレストラン」もそうですよね。僕もADを務めた「凪のお暇」でも食事のシーンは重要でしたし、プロデューサーで入っていた「Eye Love You」では韓国料理を囲むシーンがやはり大切にされました。僕が現場で先輩方から教わった「テレビドラマにおける食事シーンの重要性」は、石井先生が60年代にすでに確立したものだったのかもと気づかされました。
トイレで待ち伏せしてキャスティング…
――監督した「石井ふく子 100 歳~心のドラマの軌跡~」を制作しながら、プロデューサー石井ふく子の凄さはどこにあると気づきましたか。
佐井 一つは原作の選び方ですね。平岩弓枝の短編に目をつけシリーズ化できると狙った「女と味噌汁」、瀬戸内寂聴一流の「女の描き方」に着目した「みれん」(63年)。そして何といっても「愛と死をみつめて」(64年)。当時の大ベストセラー、大島みち子の書籍ですが、これはいけるとすぐドラマ化できる熱量はプロデューサーとしての凄さと思います。いわゆる「余命もの」ドラマの先駆けであり、方法論は今にも受け継がれているはず。食事シーンにせよ、余命ものにせよ、現代に通じる「ヒットの法則」を確立したプロデューサーでもあるはずです。
――「愛と死をみつめて」では松竹でくすぶっていた若手脚本家・橋田壽賀子を抜擢。これが「渡鬼」コンビの原点となるわけですが、プロデューサーとしての人材抜擢の目も確かなものだったと思いますか?
