子どもが親と住む権利は国際的には最大限に尊重すべきだとされている。ところが日本では、入管庁は親だけを母国に強制送還するなど、家族をばらばらにする決定を日常的に行っている。
高市政権が力を入れる「不法滞在者ゼロプラン」でも家族で在留資格のない親だけが強制送還されるケースが目立っている。生木を裂くように引き裂かれる家族。親と切り離されて日本で生きる子どもたちの現実とは。
ジャーナリスト・池尾伸一の新刊『仮放免の子どもたち 「日本人ファースト」の標的』(講談社)より一部を抜粋・編集してお届けする。(全2回の1回目/続きを読む)
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「パパ、ちゅき」――年に2週間の家族
「ピカチュウ」のプリントされたTシャツに半ズボン。ピンクの運動靴。三つ編みがよく似合っている。ママと手をつないでいた3歳のアユミが突然、手を離して駆け出した。ごった返す人々の向こうに何かをみつけたのだ。
パパだ。パパのエルバン(36)がしゃがんで、手を広げて笑っている。思いっきり走り、「パパー」と叫んで、腕の中に飛び込んだ。パパは抱きしめ、ほおずりをした。ずっと抱きしめている。アユミの存在を確かめるように。
「アユミ」。パパの涙でアユミの頬も濡れた。
「待っとったよ。よう来た」。愛知県名古屋市周辺で長く暮らしたエルバン。名古屋弁のアクセントの日本語で続けた。
韓国・ソウルの仁川国際空港。愛知県の名古屋市近郊に住む日系ペルー人のルナ(36)が、娘のアユミと一緒にトルコ人の夫、エルバンに会いに行くというのでわたしも同行した。2024年8月のお盆休みのことだった。2人がエルバンと会うのはお正月休み以来なので7ヵ月ぶりになる。
1年間で、ルナと娘アユミが、エルバンと一緒に暮らせるのはお正月の1週間と、お盆の1週間の合計2週間だけだ。海外に夫が単身赴任していて年に2週間ぐらいしか会えないという家族はそれほど珍しくないかもしれない。しかし、そうした家族は夫の単身赴任が終わればまた一緒に暮らせる。アユミの家族は違う。この先も3人一緒に暮らせる見通しがないのだ。
「もう一生、このまま離ればなれなのかもしれないのです」。ルナは言う。
