「いいことがある」と言われて
「9月15日、入管に来てくださいね。いいことがあるかもしれませんよ。身分確認のパスポートは持ってきてくださいね」
3年前の2021年8月末、名古屋入管の職員がエルバンの家を訪れて告げた。
(いいこと?)。エルバンは期待した。在留資格がない「仮放免」の状態で暮らしてきたエルバンにとって「いいこと」とは在留資格が付与されること以外にはなかった。
日本にいる父親を頼ってトルコから2004年に来日、ブロックやレンガ積みの職人として働いてきたエルバン。日系ブラジル人女性と結婚したことで、在留資格を得たが、賃金の不払いをめぐる傷害事件で22歳の時に逮捕され実刑を受けたことで、2010年に在留資格を失っていた。元の妻と別れた後はルナと出会い、娘・アユミも誕生。2人のために、懸命に働いていた。ローンで一戸建ての新築の家も買ったところだった。
傷害事件は、仕事をしたのにお金を払ってもらえず、相手宅に押しかけたことがもとだった。「自分がバカだった。めちゃくちゃ反省しとる」とエルバンは語る。ルナと同棲する時に逮捕歴のことも、在留資格がないこともすべて打ち明けた。
9月15日午前8時半、ひそかな期待を胸にエルバンは車で名古屋入管に来た。ただ、いつもはすぐ手続きが終わるのに、その日はいつまでも名前を呼ばれない。3時間以上、待たされ、午前の部での手続きに来ていたほかの外国人がみな帰ってしまったころ、ようやく、面談室に呼ばれた。
