「あれを飛び込まないお前より、飛び込むのが北條じゃないの」
「本人に言ったのは『あれを飛び込まないお前より、飛び込むのが北條じゃないの』と。この先、このケガがどう影響するかも分からないから、良かったとかは分からないけど。ジョーは自分がまだまだ下手だと思ってるから、ああいう球際で気持ちが出るんだよな」。離脱後、北條と顔を合わせた際に指揮官はそう言って、故障を生んだプレーを否定しなかった。
離脱後はチーム随一の俊足を誇る植田海や好守の森越祐人のスタメン起用が増えている。自身が抜けた「穴」は、ライバルたちの「好機」となるのがプロの世界。抜け出しそうだった競争は出直しを余儀なくされたが、この“小休止”を成長の糧にできるのも、北條だと思っている。
再び、開幕直後に矢野監督に聞いた言葉が浮かんだ。「練習で抜くことなんか一切ないし、ジョー(北條)の姿勢を見ていたら、(今年に懸ける)強い気持ちは、こっちにも伝わってくるよな」。
17年の不振をバネに、今季の打撃開眼にもつなげた。記者として接してきて、入団時から変わらないのは「負けん気の強さ」。失敗や困難にもへこたれず、即答で「見ててください、やり返しますよ」と言える心の強さは天性のものだろう。
すでに、鳴尾浜球場でリハビリを開始。左肩に装着された固定器具を指さして「相棒ですわ。寝る時も一緒ですからね」と恥ずかしそうに笑った。ただ、裏ではきっと、鋭い視線を向けながら、復帰への道筋を捉えているはずだ。グラウンドから姿を消す時間を無駄にしない。「あのケガがあったから」と言えるように。北條史也は強く、逞しくなって帰ってくる。
遠藤礼(スポーツニッポン)
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