緊張したのを覚えている理由は、どうやって曲に入ればいいかわからなかったからです。室内楽は空気感を合わせて演奏を始めるものですが、それが掴めないから僕だけ先に弾き始めてしまい、お二人が入ってこない。始めて2秒後に演奏を止めて、「ああ、やってしまった……」と。それまでピアノのソロか、2人で弾く連弾程度しかやっていなかったので、ほかの楽器と合わせる経験が少なかったんです。ちょっとしたトラウマになっています。

 緊張はいまでもしますよ。でも、それはいいことと捉えています。緊張しなかったら、練習と変わらないわけですから。本番にしか出せないパワーが出せるとしたら、緊張感のあるおかげです。緊張が高揚感に変わることもあります。どれだけステージを重ねても、舞台に出る直前に、自分の手首で心拍数を確認します。「今日も早く鼓動している、やっぱり緊張しているんだ」と自覚しながら、ステージに向かっています。

昨年11月、角野隼斗さんはニューヨークのカーネギホールでソロリサイタルを開催 ©時事通信社

ファスナーを閉め忘れる

 コンサートでミスをしたことですか?

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 それはありません……と言いたいところですが、ズボンのファスナーを開けたままステージに出てしまったことが一度あって。途中で気づいて、水を飲むふりをして舞台袖に下がって閉めました(笑)。

失敗体験もありのままに語った角野隼斗さん ©文藝春秋

 いまはコンサートのスケジュールがだいぶ先まで埋まり、最近は再来年の話をしています。ホールを押さえる以上に、大人数のオーケストラの場合は、スケジュールを早く押さえなければならないからです。人気のある指揮者は数年先まで予定が決まっています。

 個人のリサイタルはそれに比べると決まるのはわりと遅く、1年から1年半ほど先の日程です。それでも、準備のために1年先に演奏する曲のリストを出さなければいけません。頭の中にある「弾きたい曲目リスト」はたくさんあってキリがないので、いつも決めるのに困ります。

※この続きでは、「AIにできない演奏」について角野さんが語っています。約7000字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年6月号に掲載されています(角野隼斗「開成、東大からカーネギーホールまで」)。

※角野さんが登場したグラビア「日本の顔」もぜひご覧下さい

文藝春秋

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角野隼斗「開成、東大からカーネギーホールまで」

出典元

文藝春秋

【文藝春秋 目次】高市早苗研究 総理の夫 初告白20時間/〈特集〉「歩く」が人生を変える/りくりゅう秘話

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