ホンダが窮地に陥っている。今年5月に発表した2026年3月期決算で、4239億円の赤字に転落した。EVの開発中止で1兆5778億円の損失を計上したことが影響しており、「脱エンジン」を掲げた三部敏宏社長の今後が注目されている。

 三部社長といえば、2024年末にホンダと日産の経営統合が話題になった際、キーマンの一人として脚光を浴びた人物だ。当時の記事「日産“鈍感力”社長にいら立つホンダ“暴れ馬”社長」(井上久男氏)では、三部社長が描いたビジョンを詳細に伝えている。なぜホンダは、経営不振にあえぐ日産との経営統合を模索したのか? 一部抜粋して紹介します。

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「暴れ馬をなだめるのは大変」

 18世紀に英国で起きた産業革命は、生産手段を人力から蒸気機関に変えた。そして第二次産業革命を経て、20世紀初めにモビリティは馬車からエンジンを積んだ自動車にシフト。20世紀末の第三次産業革命ではインターネットが登場し、自動車とネットが融合する時代になった。現在は第四次産業革命の時代に入り、人工知能(AI)の登場によるデジタル革命が起きている。自動車も有人の自動運転から無人運転のロボットカーにシフトしていく。そうなれば、モビリティを提供するのは、大手自動車メーカーだけとは限らない。新興勢力も必ず参入してくる。その危機感のもと、ホンダは日産との経営統合を目指したのだ。

ホンダ本社 ©show999/イメージマート

「私は激動期に向いているタイプ。プレッシャーに強く、むしろ安定した時代だとやる気が出ない」と語る三部氏は、これだと思うと突っ走るタイプ。社内からは「暴れ馬をなだめるのは大変」との声も漏れてくる。

ホンダ単独では生き残れない

 ホンダが日産との経営統合を模索した背景には、次世代車の「スマホ化」がある。脱炭素問題を起点に競争が始まったEV開発はステージが進み、「ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)」、直訳すれば「ソフトウェアで定義される車」の開発競争へと移っているという。

 構造変化に対応するためには莫大な開発投資が必要となり、その回収には規模が求められる。ホンダと日産の関係が、EVでの協業から経営統合に進化したのは、将来必要となる巨額の投資を効率的に行い、回収しやすくするため、経営を一体化する方が得策と判断したからだ。