小児科病院で働く看護師の仕事は、子供の治療をし、身の安全を守ること。そのためには、子供の保護者と協力しケアをしなければいけない。では、保護者であるはずの親が子供にとって害をもたらすと疑われたとき、看護師は何をするべきなのか?

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 小学校でのいじめの実態を子供目線で描いた『Playground/校庭』のローラ・ワンデル監督の長編2作目『アダムの原罪』は、小児科病院で働くある看護師の葛藤を描いた物語。ベテラン看護師のルシーは、日々大勢の患者を相手にしながら、栄養失調で入院したアダムの様子に目を光らせる。若いシングルマザーのレベッカは、アダムに病院食を食べさせることを拒絶し、裁判所から面会を制限されても息子のそばを離れようとしない。ルシーは懸命にこの親子に寄り添おうとするが、規則の遵守を求める病院と、頑なな態度を崩さないレベッカとの間に挟まれ、逡巡する。

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『アダムの原罪』

 ダルデンヌ兄弟の影響を強く受けたドキュメンタリータッチの映像スタイルで、観客を映像へと没入させる『アダムの原罪』は、過酷な病院の実態を浮かび上がらせるとともに、問題を抱えた親子を前に、ひとりの女性が自分のなすべきことを見出すまでの過程を、臨場感たっぷりに映し出す。どのようにしてこの緊張感あふれる映画を作り出したのか、ローラ・ワンデル監督にお話をうかがった。

Laura_Wandel ©duchili

看護師は患者に一番近しい存在

――監督の前作『Playground/校庭』は、子供の視点から小学校の世界を見つめた映画でした。新作『アダムの原罪』では、小児科病院で働く看護師ルシーの視点から、入院中の4歳の少年アダムをめぐる事件が描かれます。なぜこの視点を選んだのでしょうか?

『アダムの原罪』

ローラ・ワンデル(以下、ワンデル) 映画の視点を決めるまでにはずいぶんと悩みました。当初は小児科医の視点で描こうと考えていましたが、リサーチのために病院を訪ねスタッフに話を聞くうち、実は患者に一番近しい存在は看護師だということがわかってきた。にもかかわらず、職場での権力構造の最下部に置かれるのもまた看護師である。この事実に強く興味をそそられました。

 こうして医師から看護師へと関心を移したあと、次は3つの視点――子供と看護師と母親の視点――で描く案を考えましたが、最終的にはルシーひとりの視点に絞ることに決めました。看護師こそもっとも全体を見渡せる視野を持つ存在だと考えたからです。