1959年(昭和34年)3月10日早朝、東京都杉並区の善福寺川で一人の女性の遺体が発見された。仰向けになり、顔や手、胸部、大腿部が水面から浮き出た状態だった。

写真はイメージ ©getty

 身元はBOAC(英国海外航空会社)のスチュワーデス、武川知子さん(当時27歳)。彼女は3月13日に香港行きの便への初乗務を控えていた。競争率100倍以上の難関を突破して採用されたわずか9人のうちの1人が、その3日前に無惨な姿で発見されたのだ。

「連れ込み宿」での目撃情報が示す、神父との密な関係

 当初、警察は自殺として処理したが、親族の強い希望で実施された司法解剖により、頸部への圧迫による他殺の疑いが浮上。さらに、膣内と下着から異なる2つの血液型の精液が検出され、死亡までに2人の男性との肉体関係があったことも明らかになった。

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 捜査が進むにつれ、武川さんの手帳に記されていたベルギー人神父、ベルメルシュ・ルイズ(当時38歳)の存在が浮かび上がる。ドン・ボスコ出版の副社長を務めるカトリック神父で、1958年夏ごろに武川さんと知り合い、急速に親交を深めていったとされる。

 武川さんの寄宿先近くでは、彼女と外国人男性が乗ったルノー車の目撃情報が得られた。ルノーはベルメルシュ神父が日頃使用する修道院の車両だった。そして原宿駅前の連れ込み宿「菊富士ホテル」に、武川さんと外国人男性が利用した記録があり、顔写真からその男性はベルメルシュ神父と特定される。ホテルの利用日は、武川さんがスチュワーデス試験に合格し乳児院を辞めた直後の1月8日だった。

 ロンドン研修中、武川さんはドン・ボスコ社から日本の郵便切手を大量に同封した手紙を受け取っていたことも判明。また、彼女がロンドンで「車のドライビンググローブ用に」と購入した大きな皮手袋は、1月初旬に叔父の車で原宿へ向かった際に土産として持参していたという。警察はベルメルシュ神父の関与を確信しつつも、外交筋への配慮から秘密裡に捜査を進めた。

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 彼女を殺したのは「誰」か⋯【事件の結末】は以下のリンクからお読みいただけます。

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