神奈川県座間市のアパートの一室で、9人の女性を殺害・解体した殺人犯、白石隆浩死刑囚。そんな男の素顔に迫ったのが、獄中の白石被告と何度も面会したノンフィクションライターの小野一光氏だ。
ここでは同氏の著書『冷酷 座間9人殺害事件』(幻冬舎アウトロー文庫)から一部を抜粋。残虐な殺人犯である白石死刑囚が告白した、3人の女性を“殺さなかった”理由とは——。(全2回の2回目/1回目から続く)
※本稿にはショッキングな表現が多出します。ご注意下さい。
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初公判前の白石の様子
「小野さん、もう画集はいいです。それよりもハムスターかインコの写真集ってお願いできませんか?」
9月2日の白石との10回目の面会。彼は会うなりそう切り出した。そこで私は問い返す。
「インコって、大きいのから小さいのまでいると思うんだけど、どういうタイプのがいいってある?」
「小さめのほうがいいですね。セキセイインコとか……。あと、次回の謝礼から差し引くかたちで構わないんですけど、日用品を買って入れてもらえませんか? これからメモいいですか?」
ここで白石の言う日用品とは、拘置所内の売店で面会者が購入し、勾留されている被告人が手にすることのできる物品のことだ。私はペンを手に頷く。
「えっと、まずエンピツの赤、青、黒を各1本。それからノートのB5サイズ1冊、歯ブラシの柔らかめのやつ1本、綿棒を1個、つまようじを1個、あと、防寒長袖U首っていうのがあるんで、それの3Lサイズ1つと、同じく防寒長ズボンの3Lサイズを1つ。以上です」
「これって、今日の帰りに入れたほうがいい?」
「そうですね。できればそうしてください」
「了解。じゃあ今日やっとくよ」
「いやーっ、ありがとうございます」
白石は両手を合わせて拝むように頭を下げた。これは彼が感謝の際によく見せるポーズだ。
この日は9月30日に始まる初公判を前に、総合的な話を聞いておくつもりだった。
そこでまず、裁判に臨む心境を尋ねる。