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 しかし、そこまで言う相手からの差し入れについては受け入れるというのが、いかにも彼らしい。「そういえば、いまでもテレビでよく流れるんだけど、送検のときに顔を両手で覆って隠してたじゃない。あれはどうして?」

「外に出る前に刑事から、『外にめっちゃ記者いるよ』と教えられたんですね。それでどうしようかな、と。他の事件を頭に浮かべて、表情を撮られたらイヤだなって思ったんです。それで顔を隠したんですよ」

 どこかの週刊誌で、白石が顔を隠した理由について、「カネをもらわずに顔を出すのがイヤだった」との内容で、面会時に本人が語っていたという記事があった。そのことを思い出した私が指摘すると、彼は、ああ、あれね、という顔をした。

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「あれは、逮捕からけっこう時間が経ったときに会った記者から、『あのとき(送検時)、カネを払ったら(顔を見せても)よかったの?』と聞かれ、『あ、いいですよ』って答えたんですね。それであんなふうに書かれたんです」

白石隆浩被告 ©文藝春秋

裁判に臨む心境を聞かれた白石は……

 そろそろ残り5分になることから、まとめとなる言葉として、最近の心境を聞く。

「いまは裁判と、すごい現実的な話ですけど、どの本を捨てようかなって……。整理をしながら。裁判については、日程を見ながら、うーん、どうしようかって……」

 この日、私が彼に差し入れたのは橋本環奈の写真集『NATUREL』(講談社)だ。この本が入ることで、代わりにどの本が捨てられるのだろうか……。私は続いて聞く。

「日常に変化は?」

「筋トレはやってますけど、将棋は完全に飽きてきましたね。やっぱ、相手がいないとね」

「それもそうだ。あと最後に、世間に伝えたいことってある?」

「うーん、そうだなあ。起訴事実について、私本人は、一切争うつもりはありませんってことですね。被害者側はみんな弁護士をつけて、争う気マンマンなので、それを伝えたいですね」

 次回の面会日を取り決め、引きあげようと立ち上がる直前、私はふいに尋ねた。

「そういえば最近は漫画は? 前にストーリーものを描いてるって言ってたよねえ」

「ああ、いまは諦めて、日本の漫画の模写に戻りました」

「模写ってなにを?」

「『NARUTO―ナルト―』(岸本斉史著)とかですよ。では」

 そう言い残し、一礼すると肩の下まで伸びた髪をなびかせて、面会室をあとにしたのだった。

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