2017年10月に神奈川県座間市のアパートで男女9人の遺体が見つかった「座間9人殺害事件」。犯人の白石隆浩の死刑判決が2021年1月5日に確定した。猟奇的な大量殺人を犯した白石はいったいどのような人物だったのか。
ここではライターとの渋井哲也氏の著書『ルポ 座間9人殺害事件~被害者はなぜ引き寄せられたのか~』(光文社新書)の一部を抜粋。面会を通じて見えてきた白石死刑囚の素顔とは。(全2回の1回目/後編を読む)
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白石の子ども時代
3回目の面会を行ったのは、2020年7月28日。このときは、『週刊女性』の編集者とともに臨んだ。通されたのは面会室「11番」。9時5分になると、白石が現れた。紺色のTシャツに緑色の半ズボン。無造作に伸びた長髪、無精髭。新型コロナウイルス感染拡大の対策で布マスクをしている。「よろしくお願いします」と白石は深く頭を下げた。マスク越しだと声が聞き取りにくい。今回は、どのような子ども時代だったのかを掘り下げようと考えていた。早速、子どもの頃はどのように過ごしていたのかを聞く。
「小学校のときも、中学校のときも、高校のときも暗くて大人しい、地味な感じでした。勉強は可もなく不可もなく。成績は、(評定が)2から4の間。中でも得意科目は算数・数学と体育でした。動物は好きで、インコを飼っていました」
小学校のときは陸上クラブに所属していたらしい。中学生になると1年生のときは野球部に所属するが、その後は陸上部に移籍。種目は長距離だったという。
高校で白石は職業科に入った。部活動は中学の頃とは打って変わって柔道部に。どうやら、それまでも格闘技が好きだったようだ。
「年末のK-1の番組はよく観ていました。アンディ・フグが好きでした。中学で格闘系の部活に入ろうと思ったんですが、ありませんでした。高校でもボクシング部があればよかったんですが、なかったので、柔道部に入りました。でも、1年でやめました。バイトを始めたんです。相武台のホームセンターや、もう閉店していますが、座間のスーパーです。当時の時給は850円でしたが、部活よりも楽しかったんです」
白石の話を聞く限り、学生時代に価値観を変えるような強烈なエピソードはない。
一方で、高校入学と同時に父親との関係には歪みが生じていたようだった。
「この頃は父親と仲が悪く、早く自立したかったんです。ただ、思春期的なやつです。些細なことで喧嘩しました。『早くお風呂に入れ』とか、『電気を消して寝ろ』とかです」