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「1つは、高校進学のとき。進学校に行って、大卒になっていれば、給料が変わったでしょう。高卒の給料と、大卒の給料が違うって知らなかったんです。知っていれば、大学に行きたかったですね。あのとき、父親とうまく付き合っていれば、と思っています」

 白石は「虐待はない」と言っており、これまでの話にも強烈なエピソードはなかったが、父親から離れたいほどの関係性だった。それが、今でも人生の分岐点だったようだ。もう1つとして挙げたのは、高校卒業後の就職先であるスーパーを辞めたこと。どうやら、社会保険がとてもしっかりしており、振り返れば仕事も充実していたようだった。

 一方で、どちらも事件に関わるような大きな出来事というわけではなさそうだった。

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 さらに話題を変えて白石の恋愛についても話を聞いてみる。1回目と2回目の面会では、最後の恋愛は22歳のときと言うこともあれば、犯行の間にも付き合った人がいるなど、返事に食い違いがあったが、実際のところはどうなのだろうか。

「18歳と20歳と22歳のとき。3回とも逆ナンパ。嬉しくて付き合いました。でも別れることになりますが。18歳のときはデートに遅刻したことが原因。2人目、3人目は僕の浮気が原因でした」

白石隆浩死刑囚 ©文藝春秋

 今回は1回目と同様に、22歳が最後の恋愛だと答えた。犯行に及んでいた際の女性関係については今回もはっきりしなかったが、少なくとも白石にとって強く印象に残ったのは今挙げた3回の経験なのだろう。

 また、事件後には拘置所に一般の人が接見に来ており、中には結婚を希望する女性2人も訪れていた。そのせいか、獄中結婚をするという情報も流れたが、白石としてはどう思っているのだろうか。

「獄中結婚ですか? (手で×印をつくり)ないですよ。結婚するつもりはないです。当初、Twitterで知り合って結婚したいと言ってくる女性が2人いました。でも信用できませんでした。話した内容が、週刊誌に流れ、記事になっていたからです」

最後までお金と性に執着

 3回目の面会も刻々と終了の時間が迫る。

 ここで、私は白石が自身の犯行と類似の事件に関してどう思うのか投げかけてみた。座間事件発覚から約2年後の2019年9月には、Twitterで知り合った自殺願望のある女性(当時36歳)を当時22歳の大学生が殺害する事件が起きている。私は被告人尋問を傍聴したが、その大学生は「自殺願望者の力になりたかった」と話していた。

「(彼は)学校の先生になりたかったんですよね。うーん、なんで殺したんだろう。もったいない」