2020年(1月~12月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。事件部門の第4位は、こちら!(初公開日 2020年11月12日)。

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「18時以降から大丈夫です」

 座間9人殺害事件で8人目の被害者となったHさん(当時25、女性)は、自殺を呼びかける白石隆浩被告(30)のTwitterアカウント「@終わりにしたい」にこんなDMを送っていた。

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コンビニで働き始め、明るくなっていたのに……

9人が殺害された座間市内のアパート ©渋井哲也

 なぜ、Hさんは「18時以降」と言ったのか。それは週2、3回しているコンビニのアルバイトの勤務があったからだ。母親の証言によると、犯行のあった前日の10月17日は、いつも通り、午後1時からアルバイトのシフトが入っていた。

「以前は引きこもりで、部屋でゲームをして、食事の時だけ部屋から出るような生活でした。しかし、コンビニで働くようになって、ハキハキ喋るようになり、表情も明るくなりました。家では冗談を言ったり、明るいのですが、外では引っ込み思案な性格です」(11月10日、母親の証人尋問)

 しかし、Hさんは、自殺願望が強まり、「自殺募集」する前日、10月16日、自殺関連のキーワードを検索している。例えば、「ストレス」「息苦しい」「うつ病」「精神安定剤 市販」「殺され願望」「殺されたい願望」「睡眠薬 首吊り」「自殺オフ会」「とにかく死にたい」「なんかもう疲れた」「今すぐ死にたい」などだ。

 その中には、「酸欠少女」も入っている。シンガーソングライターだが、どんな曲を検索していたのか明らかになっていない。あえて死を連想するものとしては「来世で会おう」があるが、アニメ「僕だけがいない街」や、アニメ「僕のヒーローアカデミア」のエンディングテーマ曲も歌っているので、必ずしも「死」を連想させるものばかりではない。

男女9人の遺体が見つかったアパートを調べる捜査員 ©時事通信社

白石被告が相模大野駅まで足を運んだ理由

 白石被告の犯行手順であれば、それまでは相模大野駅で待ち合わせをしたとしても、最寄駅である相武台前駅まで相手を誘導していた。しかし、Hさんの時は、相模大野駅まで白石被告も行っている。

「相武台前駅は、神奈川県の中では田舎な方です。もし、相武台前で待ち合わせをしたら、Hさんが来る気をなくしてしまうのではないかと思ったからです。ネットの出会いの話になりますが、直前になって会うのをやめたり、当日来なかったりのようにバックれられたとしても、自分の時間が無駄にならないようにしていました」