ドキュメンタリーのように生々しいSFファンタジー
しかし後半の展開は予想外だった。詳しくは書けないが、ヒューマノイドの子供たちのグループは構成メンバーを広げ、ついに計画が実行される。
リアルな世界観のSFなのか、リアリティを超えた寓話なのか、どう観るべきか悩み、最後まで挑発され続けた。「ドキュメンタリーのような生々しさでファンタジーを描く」のが、是枝監督がこのジャンルを手掛ける時の特徴だ。是枝監督しか描けないユニークな世界をまた観られたことを嬉しく思う。
手塚治虫が『鉄腕アトム』で〈ロボットの人権〉を訴えた時、ロボットは差別される人々の隠喩でもあり、SFである以上に社会問題を訴える作品だった。AIが急速に発展し、人間を超えようとしている現在、心を持った機械とどう付き合っていくべきなのかは、もはやSFでなく現実の問題になってしまった。本作のラストで是枝監督が示す人間と機械の未来像は寓話のようにも感じたが、この先の未来では、現実になっているのかもしれない。
こなか・かずや 1963年生まれ。高校、大学で8ミリ自主映画を撮り、『星空のむこうの国』(86年)で商業映画デビュー。主な作品に『四月怪談』(88年)、『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』(06年)、『七瀬ふたたび』(10年)など。2023年自身の8ミリ自主映画時代を描いた『Single8』を発表。著書に『僕たちはこうして映画監督になった 8ミリ映画時代を語る』(文藝春秋)。
INTRODUCTION
子供を亡くした夫婦が迎え入れたのは息子の姿をしたヒューマノイド。「おかえり、翔(かける)」「ただいま ママ、パパ」。家族の時間は再び動き出すかに見えたが——。カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『万引き家族』から8年ぶりの是枝監督オリジナル脚本による、ヒューマンなSFファンタジー。最新のテクノロジーで「亡き人を蘇らせる」という発想が企画の出発点という。
STORY
遠くない未来。一人息子、翔を7歳で亡くした建築家の甲本音々(綾瀬はるか)と、工務店の社長を務める健介(大悟)の夫婦のもとに、最新型ヒューマノイドを無償でレンタルするという案内が届く。人間にしか見えないその姿に心を動かされた音々は、翔のデータでカスタムするヒューマノイドを迎え入れることに決める。やってきた〈翔〉(桒木里夢)は、両親のDNAを引き継いだかのように、樹や家造りに俄然興味を持ち始める。やがて、音々と健介、それぞれが翔の死に対して抱き続けたある想いが露わになっていくが、その頃、〈翔〉と、ヒューマノイドの仲間たちとの接触が始まっていた——。
STAFF & CAST
監督・脚本・編集:是枝裕和/出演:綾瀬はるか、大悟(千鳥)、桒木里夢、余貴美子、田中泯/2026年/日本/125分/配給:東宝 ギャガ/©2026フジテレビジョン・ギャガ・東宝・AOI Pro.

