2025年6月、「僕の前立腺がんレポート」を連載中に亡くなった長田昭二さん。今回は、長田さんのがんが全身の骨に多発転移したことが判明した第5回から一部を紹介します。
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主治医が代わる「臨床試験」は申し込まないことにした
遺伝子検査の結果、僕には「PTEN」という「がんを抑制する遺伝子」が欠損していることが分かった。そしてこのタイプの人を対象とした臨床試験が国内で行われていることも、小路医師が調べてくれた。
しかし、熟考の末に僕はその臨床試験への参加は見送ることにした。
理由は大きく二つ。
一つ目は、医師が変わること。
臨床試験に参加すると、その試験を行っている病院の患者になるわけで、少なくともその治療に関してはいまの主治医とは別の医師の下で受けることになる。僕のように面倒な要求が多い患者の話を、それまでの事情を知らない医師がどこまで真剣に聞いてくれるかは未知数だ。というより、ほぼ確実に面倒がられるに違いない。人生の最終盤に、相性の合わない医師と手を組むリスクは持ちたくない。できるなら小路医師の下で残りの人生を全うしたい。
もう一つの理由は、臨床試験に参加したからと言って、必ずしも新しい治療法を受けられるとは限らない――という点。試験では、新しい治療法が従来の治療法に対して有意差をもって効果があることを示すため、「対照群(プラセボ群=従来の治療法)」というグループが作られ、くじ引きで外れると、対照群に入れられてしまう。そして、自分がどちらのグループに入ったのかは、最後まで教えてもらえないのだ。
幸か不幸か僕にはある程度の覚悟ができている。ここで変に色気を出して、外れてがっかりするのは避けたい。
これらの理由を総合して、「臨床試験は受けない」という判断に至った。9月の外来で小路医師にその旨を話した。今回も小路医師の意向に背く結果となってしまったが、それでも少し寂しそうな表情ながらも、「わかりました」と納得してくれた。

