報じるべきは、分析なのか、読み物なのか。6月3日に厚生労働省が公表した「出生数過去最少」のニュースを読み比べる。

 事実関係を整理すると(1)2025年1年間に生まれた日本人の子どもの数は、67万1000人余りで、24年より1万4000人余り減少し、統計を取り始めてから最少になった(2)1人の女性が生涯に産む子どもの数の指標となる合計特殊出生率は1.14で、過去最低――というものだ。

「出生数過去最低」を厚労省が公表 ©︎時事通信

 少子化の進展は1980年代半ばから徐々に始まり、時を経るにつれ、加速度を増している。そういう意味では「出生数過去最少」をどう報じるかは、いわば「年中行事」だ。

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 夏の戦後報道が「8月ジャーナリズム」と揶揄されつつも各社のカラーを競うように、この少子化報道もまた、メディアのカラーが表れやすい。今回は、紙面の作り方に決定的な意識の差が出た日本経済新聞と朝日新聞の6月4日付朝刊を比較したい。

日経は多角的に数字を使って検証

 まず、日経から。主に1面と5面で展開しているが、1面では左上、つまり2番目のニュースとして扱っている。この1面の記事が単なる事実を報じるストレートニュースとは異なる。「出生数は団塊世代の4分の1まで減少」と題してグラフを載せており、団塊世代という誰もが知る基準点を置くことで、分かりやすく仕上がっている。

日本経済新聞 ©︎時事通信

 そのうえで人口減による社会保障への影響に踏み込む。「日本経済新聞の依頼」として、エコノミストに試算してもらい、「社会保障給付費が働き手1人あたりで50年に248万円と、25年の207万円から2割ほど増えるとみる。社会保障給付費は税や社会保険料が財源で支え手の負担増を意味する」と指摘する。

 労働力人口の減少にも「女性や高齢者の労働参加率が上向いても労働力人口は50年には足元から1割以上縮み6100万人ほどに減る」と警鐘を鳴らす。

 1面に続き、5面ではさらに多角的に数字を使って検証する。

 伸び悩む婚姻件数、物価高に追いつかない実質賃金、不動産価格や家賃の上昇、依然として残る家事分担の男女の偏り、税や社会保険料の負担……。この問題は複雑すぎて、解があるわけではない。その難解さを数字をもって読者に伝えてくれる。

 一方、朝日はどうか。

 1面記事は、基本的には役所の発表をまとめたものだ。政府全体のスポークスマンとして尾崎正直官房副長官の記者会見コメントを載せているが、「結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因が複雑に絡み合っていると考えているが、結果として少子化に歯止めがかかっていない状況だと受け止めている」とあまりに官僚的な説明で、わざわざ載せる意味はなさそうに見える。

尾崎副長官 ©︎時事通信

 2面に続きがある。

◇◇◇

 この続きでは「出生率」報道に現れた朝日の記事らしい特徴、そしてデジタル空間で成功する日経との「決定的な違い」を論じている。「週刊文春 電子版」で配信中。

この記事の詳細は「週刊文春電子版」でお読みいただけます
「出生数過去最少」を報じた朝日VS日経の‟決定的な違い”

「出生数過去最少」を報じた朝日VS日経の‟決定的な違い”

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