「運転技術」そのものを評価できない認知機能検査
現在の認知機能検査は、運転免許証の更新期間が満了する日の年齢が75歳以上のドライバーに義務付けられているほか、信号無視など特定の交通違反をした場合に臨時で受けることができます。検査は30分程度で行われ、検査時における年月日、曜日、時間を回答する「時間の見当識」、一定のイラストを記憶し、採点に関係のない課題を行ったあと、記憶しているイラストを回答する「手がかり再生」、そして時計の文字盤を描き、その文字盤に指定された時刻を表す針を描く「時計描写」の3つの検査項目が設けられています。
この検査をもとに記憶力・判断力が「心配のない人」(第1分類)「少し低くなっている人」(第2分類)「低くなっている人」(第3分類)の3つに分けられ、第1、第2分類に分類されれば、実車指導のある「高齢者講習」を受けることができます。そして第3分類に該当した人が、「再検査」あるいは、主治医の診断書を提出し、認知症と判断されると「免許停止」もしくは「免許取り消し」となります。
「現行の認知機能検査では、ごく軽度、軽度の認知症に該当した場合、運転免許の返上は任意で、中等度以上だと返上しなければいけないことになっています。つまり、運転能力を直接評価するものではない認知機能検査を通過できるかどうかが、免許更新の可否を分けるのです」
4割が自主返納している
2017年3月に改正道路交通法が施行されてから約1年、警察庁の発表では、「認知症の恐れがある」と判定された約5万7000人のうち4割の人が運転免許を自主返納するなどして運転をやめたそうです。そのうち、認知症と医師に診断されて免許停止もしくは取り消しとなった人は1,892人で、2016年の3倍にもなりました。
上村医師は、独自に「運転行動チェックリスト」を作成、現行の検査には改善の余地があると提言しています。