致命的なカウンターを受けかねない「縦パス」のリスク
「何で前へボールを蹴らず、横へばかりパスするの?」ともどかしい思いをした経験はないでしょうか。その理由は、先ほど説明したサッカーにおける得点数の少なさと密接に関係しています。
得点がたくさん入るのであれば、リスクを冒して攻められますが、サッカーではそうはいきません。相手に先制を許してしまうと、相手は守備を固めることが多く、失点を挽回するのが難しくなります。
2025年のJ1において、先制したチームが勝利した確率は68%でした。2022年カタールW杯で日本がドイツとスペインに逆転勝利しましたが、あくまで例外的な出来事で、大会全体としては先制したチームが勝利した確率は75%でした(PK戦になった試合は引き分け扱い)。
サッカーでは1失点が致命傷になりかねません。
それゆえにほとんどの監督が、まずは失点を防ぐことを重視します。
守備のために走れる選手を多く入れたり、コーナーキックでやられないために背の高い選手を入れたり。攻撃のラッキーパンチに頼ったら、コンスタントには勝てません。ヨーロッパには「いい攻撃が勝利を決め、いい守備が優勝へ導く」という格言があるくらいです。
そういうリスク管理の思考から導かれるのが、サイドへのパスです。
サイドにパスを入れて奪われたときと、中央にパスを入れて奪われたときを比較してみましょう(図1)。
サイドで相手に奪われても、自分たちへのゴールまでの距離は長く、素早く戻って陣形を整えることができます。
それに対して中央で奪われると、自分たちのゴールまでの距離が短くなり、陣形を整える余裕がなくなってしまいます。
距離の要因だけでなく、人数の要因も絡んできます。一般的に守備側は自分たちのゴールへ直線的に迫られないように、中央に人数をかけて集まっています。その選手たちが一気に前へ出てくるため、カウンターの危険度がさらに上がります。
不用意に中央へ縦パスを入れて奪われると、致命的なカウンターを受けかねない。だから横方向のパスばかりになるのです。
え、それだと見ていておもしろくない? その通りです!
サイドにメッシのような特別なドリブラーがいたり、デビッド・ベッカムのような低空高速クロスをあげられる選手がいたりしない限り、「横パスサッカー」は行きづまります。
ミスを恐れて横パスばかりしているチームは、良いチームではありません。
ドイツではそういうチームがあると、すぐに「Feigling!」(臆病者)と野次られます。

