山口組の若頭に渡した10万円
Netflixが“参考文献”としたのが、ノンフィクションライター・溝口敦の『細木数子 魔女の履歴書』(講談社刊)。06年、同タイトルで「週刊現代」に連載したルポを書籍化したものだ。だが、溝口はドラマの描写に不満を持つ。
「後半で細木の悪さを描いているけど、どれも中途半端。不完全さを感じます」
莫大な富と名誉を手に入れた稀代の占い師は一体どんな女性だったのか。
細木は1938年、東京・渋谷に生まれた。中学生で家業のおでん屋「娘茶屋千代」を手伝い始めた。
「娘茶屋では店員の女性が売春も行っていた。細木は近くの路上に立って客を娘茶屋まで連れて行く。いわばポン引きでした」(同前)
高校中退後、丸の内の喫茶店や新橋のクラブ経営を成功させ、24歳で銀座で複数のクラブを経営する女性実業家となった。
この頃から、暴力団関係者と交際を持つようになる。ドラマにも、2人の暴力団組長が登場。モデルは稲川会幹部の滝沢良次郎と二率会幹部の堀尾昌志(共に故人)である。
「細木が店の客に大金を騙し取られた際に助けたのが滝沢です。短い間でしたが愛人関係も結んでいます。その直後に出会ったのが堀尾でした。彼は島倉の債務整理にも尽力し、20年以上の間、連れ添った情夫です」(細木の知人)
だが、作中で黒い人脈の全てが描かれたわけではない。細木が島倉の興行権を掌握し、堀尾と3人で赤坂のマンションで同居していた時のことだ。島倉は後年、前出の寺西にこんな逸話を明かしている。
「赤坂の事務所兼自宅で朝ご飯を食べていると、指を詰めた堀尾さんの若い衆が、いきなり入ってきたと。ところが細木さんは動じることなく、『メシ喰ってるんだから、血まみれの奴なんか放り出せ』と言い放ったそうです」(寺西)
滝沢や堀尾だけではなく、細木はヤクザ界の最高幹部とも顔馴染だった。
「赤坂のクラブ時代、三代目山口組若頭の山本健一、後に五代目山口組組長になる渡辺芳則らとも接点を持った。細木は店に来た山本に近寄り『親分さん、これを持っていると縁起がいいのよ』と、連番の10000円札を10枚渡したことも。こうしたヤクザとの交流は恒常的で、『魔女の履歴書』の取材をしている時は住吉会の元幹部と山口組の現役幹部が連載を中止させようと接触してきた」(溝口)
(文中敬称略)
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