――キャラクターの性格の設定は、伊藤さんがご担当されたんですか?

伊藤 まだ押井さんが入る前の段階で、自分が「こんなんでどう?」と原案を出していました。ゆうき(まさみ)さんはキャラクターメイキングをしていたけれど、性格的なことはあまり立ち入ってこなかったように思います。

――登場人物の中で動かしやすかったのは?

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伊藤 太田は、入力に対する出力がわりと一定で、一番リアクションを取らせやすいんですよね。そこに別の誰かがリアクションして、話がそのまま転がっていく。話の取っかかりとしてすごく便利な存在です。

――個人的にお好きなキャラクターはいますか?

伊藤 何をもって好きと判断するかにもよりますが、サシ飲みして楽しそうなのは誰か? と考えると、香貫花かなあ(笑)。ひろみちゃんもギリギリ、ありかもしれない。

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――後藤隊長など、各キャラクターのバックボーンは設定する時点で最初から考えているんですか?

伊藤 それは、書いてるうちに思いつきますね。最初は何も考えてなかったけど、少しずつ積み重なって、という形です(笑)。

――よく、キャラクターが勝手に動き出すと言いますが、そういう感覚も?

伊藤 小説の場合は自分の書いたもので完結しますが、アニメ脚本の場合は演出の手を経て、声優さんのお芝居が乗って……とどんどん変化していくので、勝手にキャラが動き出す感じはあまりしないですね。逆に完成したアニメから、自分の書くものにフィードバックされてくることはあります。

――完成したアニメは、脚本時のイメージどおりになるものですか?

伊藤 だいたいなっています。アニメ脚本の場合は頭の中に絵がないと書けないですね。アニメの絵って結局は記号なので、絵で人物の細かな心理を描写するのは無理……といわずともかなり難しい。だから、悲しいときに突然雨が降り出すとか、絵にできる何かに仮託するといったことをします。ほかに間とかも大事なんですけど、そこは脚本じゃなくて、演出の領域の話ですね。

「オレは本物の『悪人』が書けないんですよ。書いてて嫌になっちゃうから」

――アニメとマンガを見て、伊藤さんのテイストとゆうきさんのテイストは近いものを感じます。

伊藤 バランス感覚が似ているのかもしれません。シリアスとユーモアが無理なく同居できているというか、2人とも、どんな場合にもユーモアが必要だと思っている。だから『劇場版2』のような重苦しい映画でも、「オレこれ歌えるなぁ」「歌います?」「マイクないんだよね」みたいな、クスッとするシーンを絶対入れるようにしていて……。あと、オレは本物の「悪人」が書けないんですよ。書いてて嫌になっちゃうから、中途半端な感じになってしまう。過去の登場人物でいうと、内海ってぶっ壊れてるじゃないですか。ああいうキャラは書けない。マンガ版だと、結局ぶっ壊れてるがゆえに、殺されないと終われないんだと思います。

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――一方で、アニメの内海はどこかに逃げおおせています。

伊藤 そう。ゆうきさんとオレの決定的な違いはそこだと思う。大げさな言い方をすると、帆場や柘植には思想があるんですよ。でも、内海は楽しいからやってるというか、こっちのほうがおもしろいっていう価値判断だけで行動しているじゃないですか。オレからは生まれてこない人物像でした。

――新たに『EZY』を手がけるにあたり、特に意識したことはありますか?

伊藤 まずはコンプライアンス的な部分。今だと太田の言動はアウトでしょ(笑)。それ以外だと、自分のひとつの使命として後進にバトンを渡したいという思いもありました。だから今回、全8本のうち4本しか書いていません。しかも、そのうち1本はブッちゃん(出渕裕)との連名だし、あとは全部他の人が書いています。

――『パトレイバー』の世界は制作メンバーが変わっても継承できるのでしょうか……?

伊藤 なんとかなるんじゃないですか? 以前、『パトレイバー』を“『パトレイバー』たらしめる”条件を考えたのですが、「日常性」と「ユーモア」と「倫理」の3つだと思うんですよね。それらが後進に継承されて生まれる作品と、その時点で残っているHEADGEARメンバーとの目指す方向が一致していれば問題ないと思います。

――これまでの作品で、その三大条件が一番うまくいった話はどれでしょうか。

伊藤 さっきも出たオレの好きな2作じゃないでしょうか。どちらも結局レイバーがまるで活躍しない話ですが、自分はロボットものと思って書いてないんですよね。 『パトレイバー』は、「ちょっと変わった装備を持ってるお巡りさんたちの話」っていう設定がゆうきさんの発明。その、ちょっと変わった装備がさほど活躍しないのがオレの発明。そして、ちょっと変わった装備がかっこいいのがブッちゃんの発明(笑)。すげえかっこいいロボが、あまり活躍しないところがミソなんですよ。しかも、その装備を運用してるのがはみ出し者たちだという。『EZY』でもそうした部分はきちんと活きていますから、楽しんでもらえるとうれしいです。

 そして、後藤の30年後の姿を描いた小説「『機動警察パトレイバー』寿司屋の後藤」も発売中です。ぜひ手に取ってみてください。

『機動警察パトレイバー』 寿司屋の後藤

伊藤 和典 ,ゆうきまさみ

文藝春秋

2026年6月25日 発売