野田 かといって、常陸宮さまは90歳とご高齢ですし、他の宮家の妃殿下や女王殿下にとっても、生まれてからずっと民間で暮らしてきた養子に「皇族としてのあり方」を細かく伝授していただくのもご負担になる。
御厨 具体的な議論をすると反対が出るから、大枠だけで通せばあとは何とかなるだろうと、高市政権は考えているんでしょう。実際、そう嘯いている官僚と話したこともあります。この国の政治がときどきやる、一番まずい進め方なんですよ。
そもそも「旧宮家」とは何か
林 そもそも「旧宮家」がどういうものかも、伝わっていないと思います。私は小説を書くためにずいぶん調べましたが、宮家と言っても「1000年にわたる天皇家の藩屏」という表現が正解だとは思ってないんです。
江戸時代、細々と脈を繋いできた宮家ですが、ほとんどは僧籍に入っていた。ところが、維新のときにお寺にいた彼らを無理に還俗(げんぞく)させると、彼らは側室たちとの間に多くの子供をもうけ、伊藤博文らも増えすぎた皇族による弊害に苦言を呈すほどになって、結局長男以外は皇籍を抜けて華族になると定められました。それでも4家だった宮家は終戦前には11家にまでなっていました。
野田 「80年前まで皇族だった」とはいえ、男系という血統でたどると、室町時代の崇光天皇まで約700年さかのぼらないといけない遠縁ですね。
(2026年5月18日収録)
※この続きでは、「愛子天皇ブームの問題点」についても語り合っています。約9000字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年7月号に掲載されています(御厨貴×林真理子×野田佳彦「拙速改正で日本を分断するな」)。
■御厨貴(みくりや・たかし) 1951年、東京都生まれ。東京大学名誉教授、政治学者。オーラル・ヒストリー研究で知られ、天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議では座長代理を務めた
■林真理子(はやし・まりこ) 1954年、山梨県生まれ。作家、日本大学理事長。『李王家の縁談』(文春文庫)、『皇后は闘うことにした』(文藝春秋)では立場に葛藤する皇族の姿を描いた
■野田佳彦(のだ・よしひこ) 1957年、千葉県生まれ。中道改革連合顧問。93年に衆院議員に初当選。2011年からの首相在任中、皇族減少へ対応するため女性宮家創設の議論をとりまとめた

