すると、どうだ。エラーは噓のように消滅し、システムは正常に戻った。
まるで手品を見ているようだった。だってポールは一切コードを読んでいないし、その箇所を実装したのはクーパーだし、そのあたりに詳しいのは私なのだ。
それなのに、彼は一瞬で正解を射抜いた。やはり、天才は理屈を超えた「直感」でなにかが見えるのだろうか?
「どこが最も簡単に可能性を狭められるか」という思考法
あまりにもびっくりしたので、ポールにどういう思考回路でそう思いついたのか話を聞いた。彼はこんなことを言ってくれた。
君はきっと「どこが最も可能性の高いところだろう」と考えてそこを調べていただろう。しかし、僕のアプローチは違う。「最も簡単に可能性を狭められるところ」を探して、実行しただけだよ。そうすれば、たくさんある可能性が絞り込めるからね。この言葉は、重要な示唆を与えてくれた。
私は懸命に「どこが最も可能性が高いか」(Most Likely)を探していた。でもポールは「どこが最も簡単に可能性を狭められるか」(Narrow It Down)で思考した。
つまり私は「過去の経験」や「コードの見た目」というバイアスに基づいて、「こっちが怪しいはずだ」と思い込みで博打を打っていた。可能性が高そうな場所を、一生懸命時間をかけて調査していたわけだ。
ところがポールは、正解を当てにいっていない。ただ「どうやったら調査場所を効率的に削ぎ落とすことができるか」で発想した。設定値を変更してデプロイする作業は、数分で終わる。もしそれで直ればラッキーだし、直らなければ「設定値の問題ではない」という事実が確定し、原因の候補を半分捨てることができる。
「シンプルなファクトの積み重ねで、検証コストの低い順に可能性を潰していく」という論理的思考(ロジック)を高速で回しただけなのだ。結果、彼は最短ルートで正解に辿り着いたのである。
