「相手をケアしようとする客は男女関係なくキモいのでは」

――性風俗を利用するとき、そういったプレッシャーを与えない「いい客」でいるためにはどうしたらいいんでしょうか。藤谷さんはどうしてますか?

藤谷 うーん。それをお客さんの側でコントロールするのは無理じゃないですか? 私が客側になったときはマッサージの後「早く帰っていいよ」って言ったりとか、DMでも「返事はいいから」と送ったりしていました。あんまりしつこい感じになりたくないなーと思って。

 これは自分のライター仕事でも企画も決まってないのにやたらお茶したがるクライアントがいたら「時給発生しないのになー」と思いますし、無駄な工数は増やしたくない、無駄なコミュニケーションはさせないようにしようと思っていたけれど、でも、そういうのって態度ににじみ出ていると、それはそれで押し付けがましいじゃないですか。

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 だって「これをしてたから大丈夫」みたいな免罪符はこの世にはないでしょう。反対に、何をやっても「このお客さんならいいや」っていうケースだってあると思いますし。

 比較的負担にならない「いい客」でありたいけど、逆にそれが相手にとって負担ってことも絶対あると思うんですよ。性風俗で相手を過剰にケアしようとする客は男女関係なくキモいんじゃないかって。「クソ客に性差なし」です。

注目される「トー横女子」と、注目されない「トー横女子を買う男性」

――今回の本では、女性用風俗を利用する女性や、風俗で働く女性の「内面」ばかりがメディアで取り沙汰されて、風俗を利用する男性客や男性セラピストの内面には光が当たらない、そんな社会の不均衡も指摘しています。

藤谷 コロナ禍以前に新宿歌舞伎町のTOHO周辺、今でいう「トー横」の人の話を聞いていたことがあったんです。あそこには老若男女がいますよね。若い女の子だけじゃなくって、当時別の街の再開発で追い出されて流れてきた路上生活者の方もいると聞きました。メディアでフォーカスされるのは「トー横」にいる女性ばかりじゃないですか。

©志水隆/文藝春秋

 弱い女性にスポットを当てるという意義もわかるのですが、お金を出して女性と性行為をしたがる男性のことは放置されているように感じます。たとえば援助交際が社会問題になっていた頃、少女を問題にする本はたくさん出ていたと思うのですが、「なぜ中年男性はお金を払ってまで若い少女に執着するのか」っていう本が出版された記憶はありません。

 ノンフィクション作家の佐野眞一さんが、97年に起きた「東電OL殺人事件」――東京電力に勤務する女性が殺害され、その女性が売春をしていたという事件の報道が過熱していく様を「メディアが発情した」と表現したそうですが、まあ、そういうことですよね。

 ただ、そもそもあの事件はどうして「東電OL殺人事件」と被害者の属性で呼ばれているのでしょう。「宮崎勤幼女連続誘拐殺人事件」は犯人のフルネーム、「酒鬼薔薇事件」は犯人の少年の使った名前で呼ばれている。「頂き女子」を名乗って詐欺行為を働いて服役中の渡辺真衣に対して「りりちゃん」と親しみを込めて呼ぶ人も多い。