前回大会に「ゼロ」だったミドルシュートも激増

 具体的な表現をすると「スピードを出しやすく、曲がりやすい」。FIFAによると、グループステージ第1節は全75ゴールが記録され、そのうち12ゴール(16%)はペナルティエリア外からのミドルシュートだった。2022年カタール大会の同時点では、中長距離からのゴールは1つもなかった。

 もちろん、ボールもさることながら選手たちのフィジカルを含めたパフォーマンスの向上も要因だろう。「選手とボール、それぞれの進化。これらが噛み合って、従来だったら大きなモーションが必要だったけれど、今はクイックモーションでも良いシュートが出るようになっています」と浅井教授は分析する。

2026年大会の公式球「トリオンダ」。浅井教授によると、ゴルフボールに近い特性があるという(同前)

浅井教授が期待する選手は……

 かつては4年に1度のワールドカップに合わせてボールのトレンドが更新されてきた。近年はワールドカップとオリンピックの2年サイクルでフルモデルチェンジが行われるようになっている。3Dモデリングやコンピューター解析といった製造技術の進歩が、サイクルの高速化を支えている。

ADVERTISEMENT

 今後の進化の方向性について、浅井教授はこう見通す。

「空力だけじゃなくて、蹴ったときやヘディングしたときの“打球感”もテーマになっていくのでは。サッカーボールは大まかにチューブ、皮(カーカス)、パネルと3層になっていますが、それらの調節で打球感も当然変わってきます。ゴルフでも、クラブの打球感や音が訴求されていますし、サッカーでもそうした点の追求は進むのではないでしょうか」

サッカーボールの空力特性に詳しい浅井教授(写真提供=IPU・環太平洋大学)

 ここ数年は「ヘディング」の悪影響に注目が集まり始めている。米国サッカー連盟では11歳以下の選手に対して試合だけでなく練習でもヘディングを禁止。日本サッカー協会も2021年にヘディングに関するガイドラインを発表した。こうした流れを踏まえて、「気持ちよく蹴れる」だけでなく、選手の健康にも配慮したボールの進化にも期待を寄せているという。

 最後に、浅井教授が注目している選手を聞いた。筑波大学の名誉教授も務めていることから、やはり「あの選手」に期待している。

「谷口彰悟選手です。彼は人柄も良いし、学生としても真面目で優秀でした。代表の中ではもうベテランの選手ですけど、キャプテンシーもあるし頑張ってもらいたい。谷口選手以外も、代表には決定力のある選手が多い。トリオンダの特徴を生かして追い風にしてほしいですね」

最初から記事を読む なぜ、ワールドカップから「白黒模様のサッカーボール」が消えたのか 意外過ぎる“公式球”の歴史

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。