ワールドカップを見ていて気になることがある。ボールの変化だ。

 恐らくだが「サッカーボール」と聞いて多くの人がイメージするのは「五角形と六角形の白黒模様」の、アレだろう。ところが今や、模様は五角形でも六角形でもないし、なんだかカラフルである。

 いったいいつの間に、サッカーボールから「白黒」と「五角形と六角形」は消えたのか。スポーツバイオメカニクスを専門とし、サッカーだけでなく競技用のボールを長年研究してきた環太平洋大学体育学部の浅井武教授に、ワールドカップ公式球の変遷を聞いた。

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サッカーボールと言えば、やっぱりこのデザイン ©AFLO

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過去大会では、前半と後半で「違うボール」を使っていたことも

 今でこそ大会ごとに特徴的なデザインを発表して話題となるワールドカップの公式球だが、実は1930年の第1回大会では統一されていなかった。

 決勝戦ではアルゼンチンとウルグアイが対戦し、前半はアルゼンチン製、後半はウルグアイ製のボールを使用。後半に使ったウルグアイ製のほうが重かったとされる。前半はアルゼンチンが1点差でリードしていたが、使い慣れたボールだったことからか後半にウルグアイが逆転。最終的に4-2で勝利し、初代王者となった。

第1回大会で使われた「Tモデル」。しかし公式球というわけではなく、一部の試合で使われるに過ぎなかった(FIFA公式サイトより)

「当時は技術が未成熟で、ボールを真球、つまり真ん丸にすることすら大変だったはずです。ワールドカップの初期はその技術をどうブラッシュアップしていくかが中心だったと言えるでしょう」と浅井教授は話す。

 大きな転換点となったのが1970年のメキシコ大会だ。アディダスが公式球のサプライヤーとなり、白黒のツートンカラーを代名詞とする「テルスター」が誕生した。

 テルスターは12枚の黒い五角形パネルと20枚の白い六角形パネル、計32枚を組み合わせた構造が特徴だ。1966年のイングランド大会で使われた「チャレンジ・4スター」からパネル数が増え、真球性をさらに高めた。

アディダスが公式サプライヤーとなった1970年大会で登場したテルスター(同前)

「白黒の2色カラーリングは、テレビ中継での視認性を高める理由があったそうです。このボールが成功して、以降はサッカーボールの代名詞みたいになりましたよね。そこから30年くらい、32枚パネル構造が続きました」(浅井教授、以下同)

 浅井教授の言葉の通り、白黒のツートンカラーは1994年のアメリカ大会まで、32枚のパネル構造は2002年の日韓大会まで長らく引き継がれていった。