ハシヅメは局長(当時50歳)らに向かって包丁と偽装火炎瓶を突きつけ、「金を出せ。早くしろ。血を見たくない」と脅迫した。恐怖で反抗を抑圧された局長から、ハシヅメは現金111万5000円を強奪する。
逃走の際、焦りから入り口付近で現金を落としてしまい、拾い集めることができた21万円だけを握りしめて待機させていた車へと走り去った。この強盗の分け前として、ハシヅメは奪った21万円の中から3万円をナカニシに渡した。
ハシヅメの犯罪はこれだけではなかった。強盗殺人の前後である同年3月と5月には、自らが代表を務めるリフォーム会社を「株式会社にする」あるいは「上場する」などと架空の投資話を知人や顧客に持ちかけ、確実な株価上昇を謳って合計900万円もの現金を詐取する事件も起こしていたのである。
「妹を治すのが第一」断ち切られたリンパ球輸血の希望
ハシヅメたちの身勝手な犯行が奪ったのは、コンドウさんの命だけではなかった。彼が殺害されたことで、連鎖するようにしてもう一つの命が失われるという悲劇が起きていたのである。
コンドウさんの妹(当時43歳)は、平成17年(2005年)に急性骨髄性白血病を発症していた。彼女の命を繋ぐ希望の光となったのが、ドナーとして適合した兄・コンドウさんからの骨髄移植であった。一度は移植に成功し闘病を続けていた妹だったが、平成18年の春に病が再発してしまう。
次の治療の望みは、再び兄の体からリンパ球の輸血を受けることであった。コンドウさんは生前、周囲に妹を治すためなら何でもすると語っていたという。妹の命を救うため、自らの身体を差し出す覚悟を決めていた兄。
しかし、その直前の4月18日未明、コンドウさんは利根川の河川敷でハシヅメたちの凶刃に倒れた。
頼みの綱であった兄からのリンパ球輸血を受けることができなくなった妹は、最善の治療の機会を失ってしまった。その後、彼女は別のドナーから2度目の骨髄移植を受けたものの、体力は限界を迎えていた。彼女は「裁判で犯人がしたことをちゃんと聞きたい」と語り、病床から兄の無念を晴らす日を待ち望んでいたという。
だが、その願いが叶うことはなかった。ハシヅメたちの初公判が開かれた2日後の平成19年(2007年)6月8日、妹は静かに息を引き取ったのである。
