導入車種、なぜ「軽の王者」N-BOXではない?

 しかし実際の利用客からすると、軽自動車に「狭い」「危ない」といったイメージを抱く人も少なくないだろう。そもそもどんな車種がタクシーとして導入されるのか。

写真はイメージ ©monterosportsjp/イメージマート

 第一交通産業に確認すると、同社が最初の20台に選んだベース車は、ダイハツ・タントと日産・ルークスだった。選定の際は、「国が指定する基準を満たす車の中で、背が高く後部座席の空間が広いもの」を条件としたという。

タント 画像はダイハツ公式サイトより
ルークス 画像は日産公式サイトより

 ここで「国が指定する基準」というのは、たとえば衝突被害軽減ブレーキなど安全性に関わる装備や機能についての要件のこと。導入される車両を「安全性の高い新しいモデル」に絞るための条件であり、現行車種であれば軽自動車でもほとんどがクリアしている。

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 ではなぜ、軽市場でこのところ売上1位、2位を争うN-BOXやスペーシアではなく、タントとルークスなのか。これらは「スーパーハイトワゴン」と呼ばれ、どの車種であっても背の高さや後席空間の広さという条件に合致するように思われる。

 ただ、高齢者などにとっての乗降性を考えたときに、タントには明確な差別化ポイントがある。助手席側のピラー(柱)をドアに内蔵した「ミラクルオープンドア」という機構だ。

タントの大きな特徴である「ミラクルオープンドア」 画像はダイハツ公式サイトより

 助手席と後部座席の間の柱がないため、助手席側ドアを開けた際の間口が格段に広く、たとえば「介助者が身体を支えながら乗り込む」といった動作もスムーズになる。

 一方のルークスは、ジャパンタクシーを超える室内高と、クラス随一の室内長を強みとする車種だ。スライドドアの開口幅も競合車種を上回るほか、同クラスで初となる遮音ガラスをはじめ、車内の静粛性や快適性を高める装備も充実している。

 このように、タクシー車両に欠かせない「乗降性」や「後席空間」といった観点を重視した場合、タントとルークスはきわめて合理的な選択肢といえるだろう。

「軽で長距離は厳しい」対策は

 上のような乗降性と足元の広さだけを見れば、スーパーハイトワゴンの軽自動車は多くのセダン型車両を上回る。たとえば通院や買い物など「乗ってからすぐに降りる」という状況にはむしろ最適というわけだ。

 とはいえ長距離を走るとなれば、軽自動車特有のエンジン音やシートの薄さからくる疲労感は否めないだろう。

 このような懸念に対し、第一交通産業は軽タクシーの運用を「近距離利用」に特化させる方針を示す。

 具体的には、長距離利用が多く見込まれる駅や空港などへの配置を避け、地方都市における通院や買い物といった「地域住民の普段使い」が見込まれる拠点に配備していくというのだ。

 ただ、こうした棲み分けを厳密に行うための配車システムなど、細かな運用面については今後の試験導入を通じて模索していく予定だという。

 いずれにせよ、軽タクシーは現状のところ「新たな主戦力」というよりも、タクシー需要が満たされていないエリアにおける「スポット起用」として導入される見込みなのだろう。