軽なのに「普通車と同じ運賃」一体なぜ

 気になるのが運賃である。軽自動車でも運賃が安くなるなら「むしろ歓迎」という人もいようが、残念ながら軽も普通車と同一の料金に据え置かれる。これはタクシー事業者側が定めるものではなく、国土交通省ならびに地方運輸局による運賃規定にもとづくものだ。

 なぜ軽が普通車と同じ料金体系となるのか。2026年3月に国交省に提出された全国ハイヤー・タクシー連合会による要望書では、その理由として大きく以下の3点が挙げられている。

1)    現行の軽自動車であれば、「車内装備や安全装置など提供するサービス水準」において普通車と遜色がない

2)    タクシーの平均乗車人数は1.38人であり、4人乗りの軽自動車であっても「乗車定員を要因とする特段の支障」は生じない

3)    軽自動車は導入時は安価だが、「実際の使用年数の短さや燃費などトータルコスト」を考えると普通車と同等となる

 これらの理由から、同連合会は軽タクシーの運賃規定を普通車と同一とするよう国交省に求めている。

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 利用者からすると、1番目の理由はやや疑問が残る。たしかに近年の軽自動車は、普通車に劣らぬ(あるいは上回る)ほど装備が充実している。一方で、タクシーのサービス水準は「装備」のみに左右されるわけではない。

 最新の軽であっても、静粛性や乗り心地の面で従来のタクシー専用車種に比肩しうるとは考えにくい。また安全性についても、予防安全の機能は充実しているものの、衝突時には車体の軽さが不利になることは否めない。

利用者側のメリットが薄くても…

 このように、タクシーに「快適性」や「乗車体験」を求める利用者からすれば、軽と普通車が同一料金であることに納得しかねる部分もあるだろう。

 一方、事業者側からすると、車種区分ごとに運賃を変えるデメリットもある。システムの改修といったリソース面はもちろん、たとえば「軽の担当は稼げない」などドライバー間の格差が生まれる可能性もある。新たな働き手を開拓するために軽を導入するのに、それでは本末転倒になりかねない。

 つまり今回の規制緩和は、利用者の不満をある程度覚悟してでも、「ドライバーの確保」と「地方の交通インフラの維持」を最優先にしなければならないという、タクシー業界の逼迫した状況のあらわれなのだろう。

 しかし――依然として、根本的な疑問は残る。「運転しやすい軽自動車を導入すれば、新たなドライバーが集まる」という国や業界の見立ては、果たして本当に正しいのだろうか。

 後編では、さまざまな年代の現役タクシードライバーの率直な意見をもとに、理想とは異なる「現場のリアル」を浮き彫りにしていく。

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