SNSなどでも、軽タクシー解禁のニュースに触れて安全性の面を危惧する声は少なくない。実際のところ、自動車アセスメントにおける後席の衝突安全性を見ても、近年主流となるジャパンタクシーと比べるとどうしても見劣りするのが実情だ。
*時速64kmで障害物と車体前面の40%を衝突させる「オフセット前面衝突試験」において、ジャパンタクシーの後席安全性評価は5段階中の「5」を記録。一方、今後タクシー車両としての運用が想定されるスーパーハイトワゴン軽では、N-BOXが「4」、タントやスペーシアは「3」の評価となっている(いずれも現行モデル)
「軽しかダメ」はプロ失格?
このように、利用者側からは「軽タクシー」に対して疑問を投げかける声が少なくない。
一方で、今回の改正の目的は何より「ドライバーの確保」にある。そのためドライバー側が軽の導入をポジティブに捉えているのであれば、施策の意味もあるだろうが、実際のところはどうなのだろう。
半年ほど前にタクシー業界へ飛び込んだ20代の女性ドライバーはこう語る。
「私自身、もし会社から『軽のタクシーに乗れ』と言われたら絶対に嫌ですね。加速も悪いし、私たちにとっては1日中過ごす仕事場ですから、空間が狭くなるのは辛いです。
お客さんからの反応も怖いですね。とくに深夜の繁華街で、酔っ払ったお客さんを乗せる場面とか……。ややこしい事態に発展するのが容易に想像できます」
快適性の面でも、接客におけるトラブルのリスクという面でも、軽での営業は望ましくないというわけである。さらに彼女は、「ドライバー確保のための軽導入」という大義名分にも異議を唱える。
「『若手や女性でも運転しやすいように軽自動車を』というのは、ちょっと筋が違うと思いますね。そもそも、軽自動車じゃなきゃダメな人は、プロの運転手にならない方がいいと思ってしまいます」
お金をもらって人の命を運ぶプロである以上、普通車の車幅感覚すら掴めないドライバーを「軽なら大丈夫」と現場に放り込むのは、根本的な解決にはならないという考えだ。
「15時間も軽の車内にいるのは…」
さらに、長年コンフォートを操ってきた60代の男性ベテランドライバーも、軽の導入でドライバーが増えるという見込みについて「甘い。そういう人は(現場には)いらない」と切り捨てた。
また車両そのものについても、「軽はタクシーに向いていない」と否定的な見解を示す。
「長ければ15時間も車内で座る仕事ですから。それを考えると、この歳で軽は厳しい。
あとは耐久性ですね。このコンフォートは60万km走っていて、まだまだ快調。軽でこれだけの距離はどうしたってもたないでしょう」