さらに、乗り手のモチベーションといった問題もある。別の50代男性ドライバーは、職場における「ドライバーたちの車種へのこだわり」について教えてくれた。
「コンフォートがジャパンに切り替わったときでさえ、『乗り心地が悪くなった』と渋るベテランドライバーは多かったですからね。同じ普通車の括りでも、サスペンションやシートの違いで長時間の疲労度はまったく変わりますし。
これが軽となればいっそう、そういう人は増えるんじゃないかな」
ドライバーにとってタクシー車両は、一日の大半を過ごす仕事場であり、苦楽をともにする相棒でもある。それが普通車から軽になるという「格落ち」の感覚に、拒否反応を示すドライバーは多いのかもしれない。
「軽の方が楽」というドライバーも
それではドライバーにとって、軽での営業は「貧乏くじ」のような扱いになるのだろうか。必ずしもそうではないようで、取材を続けるうちに「軽に乗れと言われても全然問題ない」と即答する50代の男性ベテランドライバーに出会った。
「やっぱり、小さい方が絶対に楽ですもん。整備された市街地ならいいですけど、ちょっと田舎の方に入ると軽トラがギリギリ通れるくらいの路地も多いですし」
彼自身、かつてバスの運転手を務めていた経験もあり、運転技術に自信がないわけでは当然ない。それでも「サイズによって神経のすり減り方は全然違うし、小さい方が気疲れしない」と語った。
また、軽自動車の乗降性を評価するドライバーも見られた。平日の昼、高齢者を乗せる機会が多いという男性ドライバーはこう語る。
「高齢の方でも、60代くらいまでは『セダンの方がいい』という方も多いんですけどね。やっぱり70代、80代になってくると、コンフォートでは乗り降りが辛そうですから。
これからの時代、背の高いスライドドアは必須だと思いますよ。ジャパンタクシーはもちろんですが、最近の軽自動車も十分広くて乗りやすいですし、アリじゃないですかね」
このように、狭い道が多いエリアや、高齢者がメインの客層となるエリアにおいては、軽自動車が適していると考えるドライバーもいるわけである。
高速走行への不安、棲み分けは可能か
一方で、肯定的な意見を述べたドライバーも含め、共通していたのが「高速道路は怖い」という意見である。衝突安全性はもちろんだが、それ以上に「加速の弱さ」「安定性」といった性能面の不安を口にしていたのが印象的だ。
この点で、全国に先駆けて軽自動車を導入する第一交通産業グループは、駅や空港など長距離利用が見込まれる拠点への配備を避ける方針を示している。軽タクシーの普及においては、こうした「適材適所」の運用法がカギになるのだろう。
