このような棲み分けが実現できれば、軽タクシーは「地方における高齢者などの近距離移動モジュール」として活躍してくれるはずだ。
時代とともに下がる参入ハードル
最大の問題は、やはり「ドライバーの数を確保できるか」である。全国ハイヤー・タクシー連合会による2024年時点でのデータでは、タクシードライバーの総数は2020年から約15%減少し、平均年齢も60歳を超える。やはり若手を中心に、乗り手を確保しなくては衰退は避けられない。
タクシードライバーとしての参入ハードルを考えたときに、興味深いのが50代男性ドライバーによる以下のコメントだ。
「今では『GO』などの配車アプリが普及して、以前のように流しでお客さんを探す手間も格段に減りました。道を知らなくても、ナビでお客さんを迎えに行って、お客さんが指定した場所にナビ通りに行けばいいだけ。
軽の導入がなくても、30代くらいの若い女性ドライバーはすでに増えている実感があります。会社によっては外国人ドライバーを増やしているところもありますし、すでに参入のハードルは十分下がっていると思いますけどね」
たしかにドライバーの減少傾向に反し、女性タクシードライバーの数はここ数年増加傾向にあり、2023年の9,673人から2026年の14,388人と、およそ1.5倍にまで増えている。上のように技術面から参入ハードルが下がったことに加え、働き方の柔軟性や、年齢・キャリアを問わず一定の収入を期待できる点が魅力となっているようだ。
従来は「道に詳しくないとできない」「運転が上手くないとできない」といったイメージがあったタクシードライバーだが、現在では配車アプリやナビによって身近な職業になりつつある。
こうした傾向を加速させるうえで、軽の導入というのはたしかに一定の効果が見込めそうである。実際に運転したいかはさておき、「軽のタクシーがある」という事実そのものが、求職者の心理的ハードルを下げる可能性は十分に考えられる。
自身の経験や技量にプライドをもつタクシードライバーや、上質な乗車体験を求める利用者にとって、軽の導入というのは少し鼻白む変化ではあるのだろう。とはいえ業界の存続および地方の交通インフラ維持といった目的のためには、タクシーの「プレミアム感」よりも「日常における身近さ」を訴えていく必要があるのかもしれない。