タクシー乗り場の長い列。ようやく自分の番になり、目の前に滑り込んできたのは背の高い軽自動車――。そんな場面が、これから増えていくかもしれない。

 2026年6月、九州運輸局が軽自動車のタクシー車両としての運用を解禁した。今後は他の運輸局においても、同様の動きが進んでいくと予想される。これまでEV(電気自動車)に限られていた軽タクシーだが、今後はN-BOXなど街で見慣れた車種でもタクシー営業が可能となるのだ。

 世間から「せっかくお金を払うのに軽なんて……」といった声も聞かれるなか、業界大手の第一交通産業グループが20台の「軽タクシー」の導入を決定。26日、本社のある北九州市で2台の運行を開始した。

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 一体、どんな車種がタクシーとして採用されたのか。軽タクシー導入の背景も含め、同社への取材を試みた。

「ドライバーも車両も足りない」現場の危機感

 今回の規制緩和の背景として、大きな要因とされているのは「ドライバー不足」である。ドライバーの減少および高齢化が進み、地方を中心に「交通サービスの過疎化」が危惧されるなか、運転しやすい軽自動車の導入により参入ハードルを下げる意図がある。

写真はイメージ ©Zoey/イメージマート

 さらに、業界が抱える危機は「人材」だけではない。第一交通産業の広報担当者は、軽自動車導入の背景をこう明かす。

「近年のタクシー車両不足(コンフォートの製造停止、ジャパンタクシーの供給台数不足等)や、LPガススタンドの減少といった業界全体の課題に対応し、持続可能な運行体制を維持するための『選択肢の拡大』を目的としております」

日本のタクシーの代名詞だった「コンフォート」 ©AFLO

 かつて日本のタクシーの代名詞だったトヨタのセダン型車両「コンフォート」が2017年に販売終了となって以降、業界の主役は背の高いスライドドア車「ジャパンタクシー」へと移行した。

現在、主流となった「ジャパンタクシー」 ©AFLO

 しかし、このジャパンタクシーの供給台数が需要に対して不足しており、発注しても納車まで時間がかかる状態が続いているという。

 そのうえ深刻なのが、従来のタクシーが燃料としてきた「LPガス(液化石油ガス)」のスタンドが減少していることだ。タクシー台数の減少や新型車両の燃費向上により、全国のスタンド数は10年間で4分の3ほどに減り、「給油のために往復1時間以上かかる」というタクシー業者も珍しくなくなっている。

 このように、「ドライバーおよび車両の減少」と「給油施設の減少」が引き起こす悪循環は、じわじわと地方のタクシー網を蝕んでいる。こうした背景から、コストを抑えつつ維持も容易な軽自動車を導入することで、人材・車両の管理に柔軟性をもたせたい考えだ。