ソロ歌手という立場を崩さなかった

 モーニング娘。のブレイク、その後のAKB48の台頭と、女性アイドル界では大所帯のグループが主流となるなかで、松浦はいくつかユニットを組んだとはいえ、基本はソロという立場を崩さなかった点で稀有な存在といえる。トップアイドルと目され仕事が広がるなか、当時のインタビューでは、今後、再び「Yeah!めっちゃホリディ」のような曲をもらっても歌うし、映画出演の話が来てもできるかぎりやらせていただきますと述べつつ、《ただ、それの犠牲で歌のお仕事ができなくなったらいやですが》と付け加えることを忘れなかった(『ミュージック・マガジン』2006年12月号)。

映画『スケバン刑事(でか) コードネーム=麻宮サキ』(2006年)では主演を務めた(Huluより)

 松浦に言わせると、芸能界に入ったのは、歌をうたいたかったからだった。それだけにデビュー後、世間ではアイドルとして受け入れられたことに戸惑いもあったようだ。あるインタビューでは、オーディションを受ける前に「アイドルになりたい」という言葉を発した覚えはないと断言し、さらに《もう歌を唄うことはきっぱり諦めて、お前は女優一本で行けって言われたら『絶対無理です』って言うと思う。歌があったから今までやってこれたという想いがあるので》と吐露している(『音楽と人』前掲号)。

ライブ活動の休止→2年後に病気の公表

 それほどまでに歌への思い入れは強かったが、2009年にライブ活動を休止する。その理由が子宮内膜症と診断されたためだと自らブログで公表したのは、それから2年後、デビュー10周年を迎えた2011年だった。公表に際し、激しい痛みをともなう病気ということから診断後はスタッフと話し合ったうえで、コンサートを制限するなど体調を考慮して活動を続けてきたと、これまでの経緯を明かすとともに、少しでも多くの女性にこの病気について知ってほしいと訴えている。

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松浦亜弥 ©時事通信社

 シングルCDは活動をセーブする直前、2009年2月の「チョコレート魂」以後途絶えるが、2010年10月に「根の歌」、翌年3月に「ふたり大阪」を配信限定でリリースしている。後者は自身の主演ドラマ『サクラとさつき』(朝日放送)の主題歌だった。

 この間、2010年11月には企画アルバム『Click you Link me』を発表、同作は『Naked Songs』と同様に新曲とセルフカバーを含むカバー曲で構成され、収録曲のひとつ「渡良瀬橋」では本家の森高千里とデュエットしている。ジャケットからしてシックな雰囲気で、アーティスト志向が前面に押し出されていた。

『Click you Link me』(2010年)

 だが、このアルバムのリリース時の取材記事で「10年後の松浦亜弥」について訊かれ、彼女が返した答えは次のようにファンの意表を突くものだった。

「私はごく普通に、お母さんをしていたい」

《私はごく普通に、お母さんをしていたいです。昔からちっちゃいコが大好きだったので、すごく欲しくなるんですよ、子供が。で、ふと考えたときに、親って最高のプロデューサーだなと思って。まったくのゼロの状態から育てていくんですよ、自分の手で。ドキドキするほど楽しみ。もう“あやや”のプロデュースはいいかな》(『週刊プレイボーイ』2010年12月6日号)