著者はドラマ『カルテット』や映画『花束みたいな恋をした』『怪物』など、数々の話題作を手掛ける人気シナリオライター。日本国内に限らず世界中に熱烈なファンがおり、2023年にNetflixと5年間に渡る作品発表の契約を結んだことも話題となった。
本書は2025年公開の映画『ファーストキス 1ST KISS』のシナリオを書籍化したもの。松たか子と松村北斗が共演し、塚原あゆ子監督がメガホンを取った超常的な要素のあるラブストーリーだ。以前はシナリオ本といえば、主な想定読者は業界関係者やシナリオライター志望の人、または作品のコアなファンだった。いうなればマニアックな商品だったわけだが、本書は主に10代から40代の女性読者を獲得し、大ヒット。シナリオ本の新たな需要の存在を感じさせる。
「シナリオブックは小説よりも文章として読みやすい。想像を膨らませたり、作品の余韻に浸ったりしながら、どんどん読み進めることができる。現代の若者の需要に合ったタイパのいいコンテンツだと感じています。この作品はタイムリープもので、複雑な構造を持っていることもあり、いわゆる『考察』的な需要もあるようですね。また、著者が生み出したセリフが持つ力を純粋に楽しむという視点でも、シナリオは言葉の魅力を最もダイレクトに味わえる形式なのだと思います」(担当編集者の田村真義さん)
そうした需要が編集方針にも反映されている。
「ページ送りのテンポ感に気を使いました。シナリオは小説と違って章立てがありません。だから途中で文章を1行送ったり、余白を作ると、後ろのすべてのページがズレてしまう。デザイナーと何度も相談しながら、どのページでどの文章を目に飛び込ませるのかを調整しました。特にクライマックスの長い手紙のシーンは、言葉の位置を工夫しました。読んでいるときの感情の流れを、映画を鑑賞したときの状態に近づけるように意識しています」(田村さん)
シナリオ本では冒頭に配役やスタッフリストを掲載することも多いが、あえて割愛。代わりに劇中のシーン写真をたっぷりと見せている。巻末には著者との交流を綴った松による寄稿と、それを受けた長めの著者後書きも掲載。一冊の本としての面白さを追求している。
2025年1月発売。初版9000部。現在8刷5万部(電子含む)
