特定の個人がターゲットになり得る

「ミクロレベルで言えば、特定の個人がターゲットになり得ます。例えば、位置情報が漏洩すると、標的端末の保持者の所在が判明するだけでなく、その者へのピンポイントの物理的攻撃もできてしまう。マクロレベルでは、大量のスマホを活用した大規模なサイバー攻撃も可能になります」

 SNSやAIの進展という観点からも、憂慮すべき問題は少なくない。

「SNSでは、AIで自動的に生成されるナラティブ(物語)が目立ちます。ディスインフォメーション(偽情報)は表現の自由の文脈で語られることもありますが、機械が生成する情報に表現の自由はあるのか、真剣に考える必要があります」

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 実際、中国は日本に対し、SNSやAIを駆使して世論を誘導する「認知戦」を仕掛けているとされる。

「読売新聞が、今年2月の衆院選でも中国系と見られるアカウントが“反高市”の情報工作を行っていたと報じていました。インフルエンサーなどを利用し、一般人が信じやすいナラティブを作ってくる。新型軍国主義の一種とも言えます」

中国の習近平国家主席

 国家を背景とした悪意あるナラティブに対し、どう対抗するべきなのか。

「今後は、いかにAIなどの高度な技術を活用してカウンターナラティブ(対抗する物語)を生成するかが重要な課題になってくる。政府が関与するべきか議論が分かれるところですが、こうした現実を直視しなければ、国民の分断など深刻な問題を招きかねません」

 私たちにとっても“見えない戦争”は全く他人事ではないのだ。

きたむらしげる 1956年東京都生まれ。東京大学法学部を経て、1980年警察庁に入庁。2006年内閣総理大臣秘書官、2011年内閣情報官、2019年国家安全保障局長・内閣特別顧問。現在は北村エコノミックセキュリティ代表。著書に『外事警察秘録』(文藝春秋)、『国家安全保障とインテリジェンス』(中央公論新社)など。

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北村滋 元国家安全保障局長「中国との“見えない戦争”が始まっている」

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