70歳まで働き、年金を繰り下げる計画は暗転した。63歳直前、男性を襲ったのは「即刻入院、命に関わる」という深刻な病気。手術を経てダブルパートを辞めざるを得ず、貯金は枯渇。病院代すら惜しむ極貧生活の果てに彼が見たものとは⋯⋯?

 増田明利氏によるルポルタージュ『今日、年金暮らしになった 定年を迎えた17人のリアルな老後』(彩図社)より一部抜粋してお届けする。なお、登場人物のプライバシー保護のため、氏名は仮名としている。(全2回の2回目/最初から読む

写真はイメージ ©getty

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突然の病魔

 引き続きパート仕事を掛け持ちし、何とか70歳まで頑張ろうと思っていたが、63歳直前に急激に体調が悪化してしまった。

「ちょっと早歩きしたり階段を上ったりすると息切れして、動悸が激しくなるという感じになってね。少し身体を動かしただけでも息苦しくなった」

 そのうちひどく咳き込む、足にむくみが出るなどの症状も表れ、これは尋常ではないと思い、かかりつけの内科医院で診てもらった。

「循環器の専門医がいる病院で詳しく調べる必要があるということで、院長先生の出身大学の病院へ紹介状を書いてもらったんです。自分でも重い病気みたいだと覚悟していたけど、初診のその日に即刻入院しろと言われました。命に係るかもしれないと忠告された」

 とりあえず検査入院ということだったが、ひと通りの検査を終えて判明したのは、僧帽弁狭窄症という重大な病気。

「これ以上悪化したら本当に命を落とす危険があるということでして。弁置換術という手術をしたわけです」