『隣人たち』

 最後に紹介するのは、ハリウッド映画だ。

「2大名優のぶつかり合い」という図式は大好物。今回も、その期待に十分に応えてくれる作品だった。物語の軸になるのは、セリーヌとアリスという二人の女性。郊外の住宅街に隣同士に住み、同い年の一人息子を持つ親友同士だ。アリスをジェシカ・チャステイン、セリーヌをアン・ハサウェイという当代の2大女優が演じている。そして、互いの演技力や存在感を完璧に活かした、ソリッドな心理ドラマが展開することに。

『隣人たち』

 物語は、セリーヌの息子がアリスの目の前で事故死するところから一転する。それまで強固な友情を築いていた二人だったが、事故死をキッカケにそれぞれの境遇や価値観の違いが際立っていき、それがやがて決定的な対立へと繋がっていく——。

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 セリーヌは自分の息子を奪おうとしている。そんな疑心暗鬼に囚われ、心を壊していくアリスをジェシカ・チャステインが繊細に演じる。一方のアン・ハサウェイはある時点から徹底して泰然自若。その姿は、表向きは慈愛にあふれており、徐々に「男の子にとっての理想の母親」にしか見えなくなっていく。そのため「彼女は本当に優しいのかもしれない」「いや、そんなはずがない。裏に邪な狙いがあるに違いない」と観客は勝手に考えることになり、映画を見慣れていればいるほど、その術中にはまり込む仕掛けになっているのだ。アン・ハサウェイという存在自体が、一つのトリックになっているとすら言える。

 本作は、2度観ることを推奨したい。最初はジェシカ・チャステイン=アリス側の視点になり、共に疑心暗鬼に浸りながらスリリングに心理ドラマを楽しむことができる。それが、2度目は視点が大きく変わるはずだ。前半の段階でアリスやその家族が何気なくかけてきた言葉の一つ一つがセリーヌにとって重要な意味があったことが理解でき、今度はセリーヌの絶望的なまでに切ないドラマが浮かび上がる。そして、「アン・ハサウェイの表現力、おそるべし」と改めて実感できると思う。

『隣人たち』
監督:ブノワ・ドゥローム/出演:ジェシカ・チャステイン、アン・ハサウェイ/2026年/アメリカ、ベルギー、フランス、イギリス/94分/配給:ギャガ/© 2023 MINSTINCT INC.  ALL RIGHTS RESERVED./7月24日(金)全国ロードショー

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