そんな言葉を、私はまんざらでもない顔で聞いた。大学の教壇で学生たちの尊敬の眼差しを浴びてきた残り香を、会ったこともない年下の女に求めていたのだ。

 ちっぽけな自尊心が満たされる心地よさ――警戒するという当たり前の思考は、ここで放棄された。

女の切り札

 5月7日、罠の中心に潜む巨大な蜘蛛の存在が、初めて明らかになった。

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「髙倉さんがシェアしてくれてありがとうございます。家に帰る途中でこの曲を繰り返し聴きます🚗🎶✨伯父と国際金市場の取引を習ったばかりで🤗🥰伯父の指導のもとで8950ドルの利益を得ました😀🙆♀️今は1ドルが154円で、8950ドルで137万円ぐらいに両替できます❗‌❗‌❗今日も幸運の女神に恵まれた一日です🎉✨‌✨」

 137万円――数字はどんどん大きくなる。私はただ感心したふりで返信するのが精一杯だった。

「愛子さん、素晴らしい結果が出て、本当に良かったですね」

 すると女は切り札を切ってきた。

「実は、私も普通の女性で、今の成果を得られるのは伯父の功績で💓💓私の伯父は非常に有名な経済学の専門家で、金融界には他人が入手できない情報を入手できる幅広い人脈を持っています」

 この「伯父」という権威こそ、詐欺の核心だった。私のような肩書や経歴に弱い人間を転がすには、これ以上ない手駒だったのだ。

 ネットで拾ったと思われる経済学者の写真と、輝かしい経歴が並べられた。並べられた肩書の数々。それは私の知的虚栄心をくすぐった。

 しかし重要なのは、目の前にぶら下がった蜘蛛の糸を、地獄から抜け出すための救いの糸だと信じたことだ。再び社会とつながれるはず。失った張り合いがある日々を取り戻せるはず。そんな焦りと希望が、私の目を曇らせていた。私は自らその糸に手を伸ばした。

「厚かましいお願いで申し訳ございませんが、資産管理は、愛子さんにお任せできないでしょうか?」