9月20日に投開票が行われる自民党総裁選。安倍晋三首相の圧倒的な優位が伝えられているが、ロシア外遊などもあり、石破茂元幹事長との論戦はほとんど行われてこなかった。あらためて両者の発言を通して論点を整理してみたい。

安倍首相は自衛隊の存在を明記する「9条の2」新設を主張

安倍晋三首相 ©文藝春秋

安倍晋三 首相
「いよいよ憲法改正に取り組むときが来た」

日本経済新聞電子版 9月10日

石破茂 元幹事長
「必要なもの、急ぐものから憲法改正すべきだ」

日本経済新聞電子版 9月10日

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 総裁選の本格的な論戦が始まったのは9月10日。自民党本部で開いた所見発表演説会に出席した安倍晋三首相と石破茂元幹事長はそれぞれの主張を繰り広げた。

 総裁選の大きな争点の一つが憲法改正だ。安倍首相は戦争放棄の9条1項と戦力不保持の同2項を維持したうえで自衛隊の存在を明記する「9条の2」を新設したい考えだ。演説会では「憲法にしっかりと日本の平和と独立を守ることや自衛隊を書き込み、使命を果たす」と意欲を示した。秋に予定する臨時国会で改正案の提出を目指す。

石破氏は「必要なもの、急ぐものから憲法改正すべき」と主張

石破茂氏 ©文藝春秋

 一方、石破氏は「必要なもの、急ぐものから憲法改正すべきだ」と主張。具体的な改憲項目として参院選挙区の合区解消や緊急事態条項の創設を挙げた。安倍首相の改憲案については真っ向から否定し、「(安倍)総裁が幹事長当時に言っていたことは、私とまったく一緒だった。なぜ変わったのか」と牽制してみせた(朝日新聞デジタル 9月10日)。

 安倍首相は「自衛隊が憲法違反ではないと言い切る憲法学者はわずか2割に過ぎず、ほとんどの教科書に『合憲性に議論がある』と記述がある。自衛官の子どもたちもこの教科書で学ばなければならない。このままでいいのか」と語ったが、石破氏は「自衛隊を違憲と思っている人は1割に過ぎず、良い印象を持っている人が9割だ」と首相の言葉に疑問を投げかけた(毎日新聞web版 9月13日)。