「史上最悪の欠陥マンション群」と呼ばれた、都市整備公団(現UR)が作った集合住宅があった。東京都八王子市の「ベルコリーヌ南大沢」だ(現在は建て替えおよび改修済み)。
住民の多くを絶望に追いやった杜撰な建築事情などを、7月に『炎と水 中村哲と名もなき人たちの旅』で第48回「講談社 本田靖春ノンフィクション賞」を受賞した作家・山岡淳一郎氏の新著『マンション 狙われる修繕積立金 談合・なりすまし・外部管理者』(平凡社新書)から一部抜粋してお届けする。
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「全世帯の3分の1」が雨漏りに悩まされていた棟も
住宅の欠陥が住人に与える被害の深刻さを、日本弁護士連合会は、こう指摘している。
〈一生に一度の大事業を行おうと決心したことの精神的負担に加え、買替えができない商品に欠陥が存在することの苦痛、業者の不誠実な対応による苦痛、それを論破しえない素人のもどかしさとその苦痛、欠陥と同居せざるを得ないことの苦痛、価値の低下した商品の支払を毎月余儀なくされることの苦痛、等々が一挙に押し寄せてくる。
(略)その結果、被害者は、それまで業者や行政等に向けていた怒りを家庭内に向け始め、(略)家庭崩壊の危機に直面するまでに至り、(略)体調不調から入通院を繰り返すなど、被害者とその家族は財産的被害はもとより深刻な精神的被害に遭遇する〉(『いま、日本の住宅が危ない!』民事法研究会)
ベルコリーヌ南大沢の欠陥住宅を買った人たちも、まさにこうした状況に置かれた。
事態が大きく動きだしたのは、入居開始から8年が過ぎた1997年。A団地(18棟・322戸)の管理組合が、大規模修繕を視野に入れ、修繕委員会を立ち上げた。修繕委員会は翌98年に改修コンサルタントのO社に「建物診断」を依頼し、欠陥に専門的なメスを入れたのである。
O社の技術者がA団地の全戸にアンケート調査をおこなうと、3分の1の世帯から「くり返し水が漏って困る」と回答が寄せられた。こんなに高い割合で雨漏りが生じているのは前例がなかった。建物の検査の過程で不具合が見つかれば、必要に応じて補修する。いざ直し始めると、とんでもない現象が起きた。
